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日本創成会議の首都圏問題検討分科会が6月に出したリポートが話題だ。東京圏での介護難民の発生に警鐘を鳴らし、地方への移住を提言した。東京と地方。私たちは、どちらで暮らすのが幸せなのか。AERAオリジナル移住しやすさリストとともに、全3回でリポートする。
第1回:「移住しやすさ3つ星」の23自治体を一挙公開
第2回:そこにやりたい仕事があるから移り住む

ネガティブな情報も知っている限り伝えます

東日本大震災以降、移住先として人気の岡山市。今回の「移住しやすい街」には入らなかったが、市の移住・定住支援室によると、2012年に34件だった相談件数は14年には479件に急増した。自然災害の少なさや瀬戸内の穏やかな気候が、特に子育て世代の心をつかんでいる。

特徴は、移住者が移住のサポートを始めたことだ。東京や大阪で開かれる相談会で活躍するのは、移住者と地元の人たちでつくる「岡山盛り上げよう会」。通称「おかもり会」だ。

代表の佐藤正彦さん(35)自身、妻と娘を連れて横浜市から12年夏に移住してきた。仕事探しや地元への溶け込み方など、自ら体験したことをこれから移住する人に役立ててもらおうと、移住から半年後におかもり会をつくった。地元の不動産コンサルタントや1級建築士、人材紹介業などのプロ13人がメンバーになった。

佐藤さんが初めて知り合った地元の人に、「都会では会社と自宅の往復だったが、ここでは地域を盛り上げる活動がしたい」と伝えたことがきっかけで、繋がった人たちだ。

各自の得意分野で、仕事や住まい探しを手助けする。希望者には下見に同行する徹底ぶりだ。

「行政の窓口ではわからないネガティブ情報も、知っている限り伝えます」(佐藤さん)

移住支援を通じて岡山への愛着を深めたという佐藤正彦さん。おかもり会メンバーも集う隠れ家的カフェは、今一番のお気に入り

移住支援を通じて岡山への愛着を深めたという佐藤正彦さん。おかもり会メンバーも集う隠れ家的カフェは、今一番のお気に入り

イラストレーターのおきつかささん(39)は、おかもり会が東京で初めて開いた説明会に参加し、父子で移住した。妻は東京での仕事を続けるため、週末だけ岡山に通う。おきさん夫婦が一番気にかけていたのは子どもの教育環境だが、おかもり会で地元で評判の良いエリアを聞き、今の住まいを見つけた。2LDK庭付きで、家賃は6万8千円。東京では家賃13万円、保育料に月10万円もかかっていた。

「子どもと過ごす時間が増えたのが何よりの収穫」(おきさん)

おきさんの仕事は場所を選ばないが、有効求人倍率が比較的高い岡山でも正社員の仕事を見つけるのは容易ではない。

佐藤さんは移住希望者に必ず、「移住前と同じ職種や給与レベルにこだわらないほうがいい」とアドバイスする。

自身はソフトウェアの世界から建設業へ。ネットで見つけた数社に履歴書を送った。
「職歴を見て興味を示しているということは『やっていける』と判断されたということ。業界が違っても、経験は生きます」

岡山で生活するうえで最低限必要な額を計算し、会社と給与交渉した。横浜時代に比べて3割下がったが、生活費も下がった。通勤時間は1時間15分から10分に。地元のおじいちゃんにもらった苗でなすやキュウリを育て、子どもと収穫するという「豊かな」暮らしも手に入れた。

移住支援をきっかけに、地元の人間関係が広がり、家族ぐるみの付き合いも増えた。

「何を得るために移住するのか。家族にとって何が大切か。そこがブレないことが移住成功のカギだとアドバイスしています」

おきつかささんは、移住後に増えた子どもとの会話から、新しいキャラクター「くしゃくまさん」を生み出した。LINEのスタンプをつくり、売っている

おきつかささんは、移住後に増えた子どもとの会話から、新しいキャラクター「くしゃくまさん」を生み出した。LINEのスタンプをつくり、売っている

(取材・文:アエラ編集部 石臥薫子、金城珠代 写真:藤岡みきこ)

AERA 2015年9月21日号