E.トッドが難民問題を語る。「ドイツの難民受け入れは“罪滅ぼし”だ」

2015/10/19

エゴイスティックなドイツが難民に寛容な理由

──現在、シリアを中心とする難民問題が欧州社会を揺るがしています。トッドさんは、移民問題について分析した著書『移民の運命』でも知られていますが、いまの難民問題をどう見ますか。
トッド 今ヨーロッパで起きていることは、ロジカルであると同時にミステリアスです。
まずロジカルな部分から説明しましょう。ドイツがいまの経済規模を維持するためには、毎年20万人の移民が必要です。そのため移民にとっても、シリアからトルコ、ギリシャ、バルカン半島を経由して、ドイツに向かうのが自然な選択肢となる。
「移民によってドイツ国民の失業率が上がるのでは」との議論もありますが、ドイツの失業率は4%強ですから、ほかの欧州諸国に比べれば取るに足らない数字です。
次にミステリアスな部分ですが、ギリシャ危機への対応を見ればわかるように、ドイツはケチな国です。柔軟性がなく、エゴイスティックで、サディスティックです。一方で今は、移民をどんどん受け入れる「善意の国」としての顔を見せ始めている。これをどう理解すべきか。