ママ社員にまだ冷たい、アメリカの現状
ユーチューブ女性CEO、ママ社員第1号となったグーグル時代を語る
2015/9/26
ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンにガレージを貸す
1998年に、スタンフォード大学に通う2人のコンピュータサイエンスの研究者が「ガレージを借りたい」と頼んできたら、あなたは彼らにいくら請求しただろうか。
「1700ドル」と答えるのは、現在ユーチューブのCEOを務めるスーザン・ウォシッキー。彼女は、当時住んでいたサンフランシスコの裕福な地域「メンロ・パーク」にある家のガレージを、グーグルの起業者ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンに貸したのだ。「敷金もしっかり請求した」と彼女は付け加える。
当時、ペイジとブリンはスタンフォード大学で博士課程の学生の2人だった。シリコンバレーで働くほとんどのエンジニアより稼ぎが少なかったはずだ。それでも、ウォシッキーは彼らに高額を請求することにためらいはなかったという。
「いうまでもなく、現在、サンフランシスコの家賃は極めて高い。当時も、いまほどではないにせよ、かなり高かった」と、ウォシッキーはセールスフォース・ドットコム主催のクラウドコンピューティング・イベント「ドリームフォース2015」で語った。
185平方メートルの広さがある4LDKのその家に、ウォシッキーはもう住んでいないが、ペイジとブリンにガレージを借したことによって、彼女の人生は大きく変わった。その後、ウォシッキーはグーグルの18人目の社員として雇用され、グーグルの主要事業である「アドワーズ」や「アドセンス」を管轄し、広告やコマースの担当上級副社長になったのだ。
出産有給休暇を取れる女性は、わずか12%
ドリームフォースのキーノートで、もうひとつの面白い事実が明らかになった。それは、ウォシッキーが、グーグルで1人目のママ社員だったことだ。
だからこそ、ウォシッキーは産休についていろいろ調べた。そして、彼女は、アメリカの育児休暇の現実に驚いた。
「アメリカでは、どの業界においても、ほとんどの女性は出産有給休暇を取れない。そのことを知って大変驚いた」とウォシッキーは語る。「民間企業で働く女性のうち、出産の際に有給休暇を取れる女性はわずか12%しかいない。しかも、そのうち4人に1人は、出産後10日以内に職場に復帰している」
その後、グーグルで妊娠・出産・育児する女性が増えていく歴史を見てきたウォシッキーは、もうひとつ面白い「事実」を発見したという。社員が取得できる出産有給休暇を長くすると、以前より女性社員をつなぎとめることができるということだ。
「子どもが少し大きくなるまで待てば、子どもは夜ぐっすり眠るようになり、ベービーフードからも卒業する」と彼女は言う。「多くの女性は職場に復帰しないといけない。なぜなら、彼女らは失業したくないし、仮にそうなれば経済的に困難な状況になるからだ」
グーグルは、今では出産した女性社員に18週間の有給休暇を提供している。そして、男性社員にも12週間の有給休暇を提供している。もっとも、ウォシッキーによると、ほとんどの企業は、長期間の出産有給休暇が企業にとって価値があると理解していないという。
そうした企業をさとすかのように、ウォシッキーは「出産有給休暇は、ビジネスにとって役立つ」と力強く語った。