flashnews_150925_bnr

「ドリームフォース」イベント・リポート(3)

マイクロソフトCEOが語る「クラウド、ウエアラブル、ビッグデータの未来」

2015/9/25

スマホの次は何か?

マイクロソフトCEOのサティア・ナデラは、次世代のコンピューティングは、ウエアラブル・デバイス、チーム・ダイバーシティ、そしてビッグデータの“海”の中でパターンを特定することこそが、特徴となると宣言している。

グーグル・グラスの失敗と、アップルウオッチのあまりさえないセールスにもかかわらず、世界はやはり「ウエアラブルは今度の重要なデバイス」と認識している。そして実際に、その“パラダイム・シフト”の兆しは見え始めている。

「多くの人から、スマホの次は何かという質問をよく聞かれる。その初期兆候はすでに表れ始めている。すなわち、手首や耳、目につけるウエアラブル・デバイスだ」とナデラはサンフランシスコで開催するセールスフォースの「ドリームフォース」のイベントで語った。

「今後、コンピューティングは、『常にどこにでもある』ものになる。だから、大きな課題は、あなたが動くとともに、あなたの体験も動くのか? ということになる」

スマホとインターネットにつながるデバイスの台頭と、急増するデータ量がさらにインターネット市場を拡大している。特に蓄積するビッグデータの量たるやすさまじく、あらゆるインターネット・データの9割は、過去12カ月以内につくり出されたものだという。

Microsoft CEO Satya Nadella (Photo: Reuters/Aflo)

マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏(写真:アフロ)

将来の通貨は「データ」

日々、蓄積していくデータをどのように効率的に分類できるか──ナデラはそれこそが今後の企業の課題だと言う。

ナデラは「企業にとって、データは通貨同様だ」とさえ言う。

「クラウド・コンピューティングによる大きなパラダイムの変化は、アクセス可能なデータに対し、実際に何をしたのかを求められるようになったことだ」

ちなみに、マイクロソフトではすでに、「データ」は最も重要な“資源”となっている。そして、2018年まで、クラウド事業で200億ドルを稼ぐと計画している。

「ビッグデータの世界では、そのデータに共通する小さなパターンを特定することが、最も重要になる。データの海の中では、このパターンを見つけない限り泳げない。そして、これを実現するには、すべての機械学習とビッグデータが融合する必要がある」

ビッグデータを扱うための3つの質問

今回のイベントでは、マイクロソフトとセールスフォースが、両社の最新の業務用ソフトに互換性を持たせるパートナーシップを結ぶ、と発表した。

今後半年以内に、セールスフォースが発表するIoT(Internet of Things)向けクラウド製品が、マイクロソフトのソフトと統合できるようにする。ちなみに、このIoTクラウドは、クライアントが持つデバイスやセンサ、ソフトウェアから、リアルタイムのデータを収集し、1カ所で管理ができる設計だという。

「われわれは、ビッグデータを扱うにあたり、3つの質問を自らに問うべきだ。1つ目は、何が起こったか? 2つ目は、なぜ起こったか? そして、どうすればいいか? その答えのカギは、社風にある」

マイクロソフトで22年間にわたり、法人向けから消費者向けサービスまで幅広く担当してきたナデラは、2014年に同社のCEOに就任した。彼は、同社の経営にとってグローバルチームのダイバーシティが極めて重要だと述べる。

「マイクロソフト・ホロレンズ」の発売時期は?

「192カ国で運営するマイクロソフトにとって、ダイバーシティとは経営的に実際に必要なものだ」とナデラは語る。

「企業は、人によりつくられたものであり、人々の情熱の集合こそが企業だ。だからこそわれわれは、“なぜマイクロソフトが存在するのか”を自問し続ける必要がある。創業から40年の間、われわれはエンパワーメントの絆でつながっている。それは、われわれのミッションかつ、われわれの熱情だ」

同社は今、バーチャル・リアリティを3Dの仮想オブジェクトを重ねて表示するバイザー型のホログラム・コンピュータ「マイクロソフト・ホロレンズ」を開発中だ。そのリリースのタイミングを聞かれると、ナデラは、開発者用のキットは2016年末までに発表すると答えた。

「最初に開発者や法人にリリースする。そして、そこからのフィードバックを生かし、数年かけて進化させる計画だ」

ちなみに、ナデラは、同製品を最も早く試してもらうテスト・ユーザーは、デザイナーや建築士になると述べた。

「これにより、デザイナーや建築士は、ホログラムを通して計画図をロードし、自分のデザインをほぼ『現実』でみることができる」(文中敬称略)