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コンサルタント批判を超えて

コンサルタントとして「真のプロフェッショナル」であるために

2015/9/17
ユーザーからプロピッカーに選出された、コーポレイトディレクションでパートナーとして活躍中の占部伸一郎氏。最終回は、コンサルタント業界の変化や批判される要因を分析したうえで、コンサルタントとしてあるべき姿について語る。

第2回もお読みいただいた方は、ありがとうございました。少し間が空いてしまいましたが今回はNewsPicks編集部のコンサルティング特集(「変貌するコンサル業界。3つの新トレンド」)も振り返りながら、コンサルティング業界の展望について考えていきたいと思います。

産業化してきたコンサルティング業界

コンサルティング特集には、勝手な使命感もあり連日長いコメントを付けていました。一部繰り返しになってしまいますが、この業界に対する個人的な理解をまとめておきます。

コンサルティングというものが日本に入ってきてどのくらい経つかは正確にはわかりませんが、自分が所属するコーポレイトディレクション(CDI)がボストン コンサルティング グループ(BCG)から分離して創業して今年で30年がたちました。そのうち自分は半分ほどを過ごしています。その間を通じて、特にここ10年ほどで大きく業界自体が変容してきたのは、特集の通りだと思います。

よく、「コンサルの時代は終わった」「MBAもフレームワークも一般化して必要なくなる」などと言われますが、業界の規模だけ見ればむしろ各社拡大の一途をたどっています。これは一言で言えば「産業化」の歴史と理解しています。

つまり、一握りのスーパースター的な個人がある意味職人的にやってきたものが、一定のスペックを持つ人ならば訓練を積めば活躍できるように変化したのです。イギリスの産業革命をイメージしてもらえるとよいと思います。

この「産業化」は個人的には「専門化」「アウトソーシング化」「ソリューション化」という大きな3つの流れで理解しています。

「専門化」は読んで字のごとく、ある特定の業界または機能/専門領域でチーム化し、そこでの専門知識やノウハウで戦う方向性です。世の中あまたいる「○○コンサルタント」はまさにそれですし、戦略コンサルの中でも「インダストリー」×「プラクティス」などの名前でチーム分けしているところが多くなっています。

クライアントから専門性を求められるようになってきた時代の流れもありますが、人材育成の面から考えても「専門性」をつけさせたほうが売りやすいですし、その人の能力に多少の差があっても育成がしやすい利点があります。

「アウトソーシング化」は、特集の中では「高級人材派遣化」「高級文房具」と言われていたものです。もともと戦略コンサルはいわば「経営企画機能のアウトソース」とも言えますが、ここでのアウトソースは、より現場に近いミドルを相手にした「実務遂行の代行」です。

働き方によっては「資料作成代行屋」という動きになってしまいます。大手ファームの売り込みの成果もあり、日本の市場においては資金に余裕のある大企業を中心に、このような使い方で年間契約することが一般化しています。

この形式では、派遣されたコンサルタントは日々高いアウトプットを求められるわけではありません。また、ある程度地頭がよい人を送り込めばファームとしては安定した売り上げが上がるため、人材の稼働率勝負のコンサルティング会社にとって、経営面ではありがたい方式です。

「ソリューション化」は、ある決まった「ベストプラクティス」を他社にも当てはめていくやり方です。もちろんカスタマイズはしますが、方法論がある程度決まっていると、遂行する側はそれほどの創造性は求められません。典型的にはコスト削減系のプロジェクトやシステムなどのプロジェクトでしょうか。

ちなみに、編集部が特集で掲げていたプライベート・エクイティ(PE)化は、コンサルタントの性質を考えるとピンとはこず「企業投資におけるコンサル機能の取り込み」と理解すべきだと感じました。

また、もう一つの潮流として挙げられていたデザインの取り込みについても、アクセンチュアの記事ではあくまで「アウトソーシング」の一分野と位置付けているようにみえましたし、マッキンゼーの記事では成果物を美しく見せることの延長線に思え、大きな潮流という感じは受けませんでした。

以上、良し悪し、好き嫌いは別として3つの「産業化」が大手ファームを中心に一気に進んだと思います。

「産業化」は社会的な生産性は上がる一方で、労働者側は「疎外」を感じるようになり、やりがいを感じにくくするという弊害を引き起こしましたが、コンサルティング会社で起こっていることも同じようなことなのだと思っています。

もちろん、顧客側も進化しています。コンサルティングが一般化する中で、コンサルティング会社を使ったことがあるクライアントは増えました。いわゆる「コンサルノウハウ本」「MBA本」の普及で、知識も一般化しました。

さらに、MBA出身者やコンサルティング会社出身者がクライアント側に増えることによって、「本当にわからなくて/困って相談する」使い方だけでなく、「やり方はわかっているが時間を買う」「やることはわかっているので安くやってくれるところにお願いする」「ベストプラクティスを導入したい」といった使い方が広まりました。

このような顧客の進化、そしてここでは詳細は省きますがテクノロジーが進化(インターネットによって情報自体の価値は昔に比べればかなり落ちました)する中で、コンサルティング業界が自ら「産業化」を進めることによって、特定のスーパースターで成り立つボラティリティの大きな「職人集団」の世界からシステマチックに再現性があるかたちに「進化」し、変化に適応してきたのだと思います。

コンサルタントはなぜ批判されるのか

第2回で述べたように、私自身は日々楽しく働いていますし、クライアントに対しても価値を出していると感じられているので仕事を続けているのですが、一方で残念ながら世の中では、コンサルタントは批判の的になることが少なくありません。その要因はいろいろあるのですが、ここでは個人的に大きいと感じる3点について述べたいと思います。

1. 「コンサルタント」は玉石混交

最も大きな要因はこれでしょう。コンサルタントは、弁護士、会計士などと違って資格が必要ありません。極端な話、「自分はコンサルタントです」と名乗ってしまえば、誰でもコンサルタントになれるのです。

また、最近は何らかの解決策を提示する人、という意味合いで「誰でもコンサルタント化」現象が起きています。「ITコンサルタント」「ECコンサルタント」「省エネコンサルタント」「片づけコンサルタント」……。

また、脱税指南で逮捕された人の紹介では「経営コンサルタント」という肩書がつくことも多く、イメージを悪くしているかもしれません。

また、戦略系に限っても、そもそもファームの看板よりも「個人」が重要な職業なうえに、これだけ拡大してきていれば、優秀な人もいればそうでない人もいるのは当然です。十分な訓練を受けないまま前線に飛び出す人も少なくありません。

ただ、そんな捉えどころのない職業であるからこそ、自らを定義づけ、常に律することが重要です。「経営」のコンサルタントである以上は、「プロフェッショナル」であるべきだ、とファームの中ではよく話しています。

「プロフェッショナル」の語源をひもとくと語源は、ラテン語のprofessus。もともと宗教用語で、神に対して告白、宣誓した人や神の託宣を受けた人を指し、最初は聖職者のみを指しました。

聖職者は「精神的苦悩」に向かい合うプロフェッショナルでした。また、医者は「肉体的苦悩」に、法律家は「社会的苦悩」に向かい合うプロフェッショナル。

であれば、経営コンサルタントは企業の経営上の「苦悩」に向かい合う「第4のプロフェッショナル」になるべく、自らの倫理観と技能を磨き続ける人。CDIでは、そう定義しています。

今、コンサルタントを名乗っている人がこんな認識を持っている人ばかりでないことは、業界にいる者としても感じるところです。それが「コンサルタントは……」と揶揄される一番大きな要因のような気がします

2. コンサルタントに対する幻想

コンサルタントに対して「正解を出してくれるすごい人」という認識は根強くあります。

クライアントの中にはあたかも「魔法の杖」のように捉えている人もいて、そういう人には事前にしっかりと話をしておかないと、プロジェクトが炎上することになります。実際、そういう態度の会社は良いプロジェクトにならないことが多いです。

前回も述べたように、コンサルタントはあくまで「主観を述べる」職業です。そもそも「経営判断」に唯一無二の答えはありません。答えがわかるところまで待っていたら、競合には必ず負けます。必要な情報は集め、ロジカルに考え尽くしたうえで、最後は「こうだろう」という仮説で企業は動いていくもので、そこに対して「われわれならこう考えます」と仮説を述べるのです。そのため、無責任な言い方をすれば、合っていることもあれば、結果的に間違っていることもあるでしょう。それでも、経営者が考えていることの背中を押してほしい、検証してほしい、多角的に見て欲しいという要望のために、コンサルタントは雇われるのです。

また、コンサルタントはやはり最後は外部の存在。たとえば、メタボの人に対して「ちゃんと運動してお酒は控えないとだめです」と処方箋を出しても、本人のやる気がなければ実行させられません。

もちろんやる気を出させる仕掛けなどを提案することも含めてコンサルタントの力量ではありますが、最後は第三者の限界があります。

3. 「コンサル見習い」でしかない「元コンサル」が大量生産されている

少し言葉は悪いですが、これだけ産業として大きくなってくると、コンサルティング会社に短期間在籍しただけの中途半端な「元コンサル」が大量に生まれることになります。

そういう人に限って少ない経験と、うまく適応できなかった個人的感情も相まって「コンサルティングは意味がない」と吹聴する傾向があるように感じます。

そのうえ、転職先でうまく機能できないことも多いことから、周囲の人がコンサルティングの評価を下げることにつながっているように思います。個人的には「元コンサル」と名乗るのは「マネージャー」を経験した人だけにしてほしい、というのが本音です。

日本一の難病が持ち込まれる医者を目指して

これまで述べてきたように、コンサルティング業界が「産業化」してきた流れの中で、規模を拡大しているファームがあるのも事実です。そのためさまざまな批判の的になることも増えているのでしょう。

一方で、私が所属しているCDIや自分個人としては、業界全体の動きとはあえて背を向けて「真のプロフェッショナル集団」としての道を模索していきたいと思っています。

「専門化」「アウトソーシング化」「ソリューション化」する仕事は、やっているほうははっきり言って面白くありませんし、産業全体がそちらに動いていっているからこそ、「先例のない、答えのない問いに直面し、本当に困ったときに呼ばれる存在」になりたいと思っていますし、そういう問いに対して常にゼロベースで自らの持てるすべてを振り絞って考え尽くす存在でありたいと思っています。

これまでコンサルタントを14年やっていますが、何かを究めた感覚はまったくなく、日々修行の身という思いですし、目指す姿に向けて自己の倫理観と技能を常に研ぎ澄ましていく必要があると感じています。コンサルタントが企業の医者だとすれば「日本一の難病が持ち込まれる医者」というのが目指す姿でしょうか。

最後は業界全体の展望というよりも、個人的な思いでの締めくくりになりましたが、3回にわたってお付き合いいただき、ありがとうございます。今後もPickしていきますし、機会があれば別の連載にもチャレンジしたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします。