ホリエモン、ロンジンと考える「ソニー改造計画」

2015/9/7
2015年第1四半期は、デバイスやゲームの好調により利益が回復したソニー。長きにわたる停滞は終わり、底打ちしたと言えるのか。今後の成長と生き残りのために、ソニーはどんな戦略で食っていけばいいのか。エレクトロニクス、金融、ゲーム、音楽、映画など事業別にソニーの「改造計画」を考える。

大バッシング後、株価は順調に上昇

「ソニーはもう終わった」
2014年9月、ソニーがモバイル事業ののれん減損を主因に大幅な下方修正と無配転落の発表を行うと、メディアはいっせいにソニーを叩いた。
そんな大バッシングを受けてから一年が過ぎようとしている。
世間のリアクションとは対照的に、その後、ソニーの株価は順調に増加。2015年5月には前年9月に比べ約2倍に上昇している。その背景には、スマホ用CMOSイメージセンサーが絶好調であることに加え、長年、赤字が続いてきたテレビ事業の止血に一応の目途がついてきたことがある。
また、2015年夏には、デバイスへの成長投資と財務基盤の回復を目的とした公募増資とCBの発行により約4000億円の資金調達に成功した。最終利益が過去2年連続で大幅赤字でありながら、である。ここからは、現経営陣が進めている収益改善策に対して、資本市場が一定の信任を与えていることが読み取れる。
下図に記したように、同業他社との株価推移の比較でも、2014年来ではソニーがベストパフォーマーだ。 
しかしながら、「世界のソニー」への復帰はまだまだ先である。国内の電機メーカーの中では最大の時価総額となったが、サムソンとは約4倍、アップルとは約19倍の開きがある。復活してきたとはいえ、まだまだ、世界のトップ企業とは、大きな差があるのが現実である。 

3年後の稼ぎ頭は、エレクトロニクス

では、現在のマネジメントはソニーをどのように再生させようとしているのだろうか。
ソニーは2015年2月に第2次中期計画を発表。中計最終年度の2018年3月期にROE10%、営業利益5000億円以上を目標として掲げている。
各事業の責任者によるアカウンタビリティ(説明責任)はこれまで以上に高められ、下図のように事業ごとの目標値も開示されている。
注目すべきは、2018年3月期にはセグメント別で、エレクトロニクスが、エレクトロニクスの中ではデバイスが、それぞれ最大の稼ぎ頭となることを目指していることだ。  

リカーリング型ビジネスの創出がカギに

今回発表された中期計画は、“第2次”と表記されているように、平井社長が2012年に社長に就任してから2回目のものとなる。第1次は営業利益率5%以上、ROE10%を目標としたが、結果はそれぞれ0.3%、−7.4%にとどまっている。
結果が大幅に未達となった反省を踏まえ、第2次中期計画ではさまざまな施策が発表されたが、中でも注目すべきは、以下の「組織変革」に対する基本方針である。
・結果責任・説明責任の明確化
・持続的な利益創出を念頭に置いた経営(リカーリング型ビジネスの強化)
・意思決定の迅速化と事業競争力の強化
発表当初は、上記の方針のもとで「分社化経営を推進する」ことだけがハイライトされ、事業売却が加速するとの憶測をよんだが、本来、最も注目されるべきは、“持続的な利益創出を念頭に置いた経営(リカーリング型ビジネスの強化)である”。
リカーリング型ビジネスとは、ネットワークサービス(ゲーム)、メディアネットワークビジネス(映画、音楽出版ビジネス)、交換レンズなど、売り切りではなく、継続性、反復性が期待できるビジネスを指す。リカーリング型ビジネスに注力するのは、これを強化することが、一時的な回復ではない、持続的な成長をもたらすからだ。
ソニーのミッションは、「ユーザーの皆様に感動をもたらし、人々の好奇心を刺激する会社であり続ける」である。しかし、冒険もしない、自由闊達(かったつ)でもない会社からは感動も得られない。そうならないためにも、エレキの収益性回復とともに、リカーリング型ビジネスの強化により「他人がやらないことをやる」という冒険を許容できる財務基盤の確保が不可欠だ。

ソニーは真の復活を遂げることができるのか

本特集では、「ソニーの復活は本物か」を検証するとともに、「世界のソニー」にふさわしい「新ソニー」の姿を、アナリスト集団のロンジン、堀江貴文氏とともに考えていく。
第1回は、堀江貴文氏が、2005年当時にソニーへ買収を提案しようとした際に描いた「幻のソニー買収計画」の全貌を披露。第2回は、ソニーの今日までの歴史を、4つのライフサイクル別に振り返る。第3回〜第6回は、エレクトロニクス、ゲーム、エンタメ、金融の主要4事業をアナリスト集団ロンジンの和泉美治アナリスト、泉田良輔アナリスト、椎名則夫アナリストが分析。第7回〜第10回は、堀江氏とロンジンのアナリストたちによる対談「ソニー改造計画」を4回に分けてお届けする。
日本人の多くが、愛してやまないソニー。そのソニーがどうすれば、真の復活を遂げることができるかについて考えていく。