オリンパス元社長ら海外有識者は、日経のFT買収をこう見る
2015/08/26, NewsPicks編集部
日経のFT買収を評価する声と、危惧する声が交錯
オリンパス元社長ら海外有識者は、日経のFT買収をこう見る
2015/8/26
日本経済新聞社による英国の大手メディア「フィナンシャル・タイムズ(FT)」の買収は、日本のみならず、世界でも大きな話題を呼んだ。海外の有識者や海外メディアのジャーナリストたちは、今回のニュースをどう受け止めたのだろうか。多くの関係者たちは、今回の買収に対しては「経済的に意味がある」と肯定的ながら、今後のFTの編集権の独立に対しては懸念を示している。
欧米メディアは、日経のキャッシュ・パワーを評価
日本経済新聞社(以下、日経)に買収されるずいぶん前から、欧米のメディアはFTの売却を予想し、それを報道していた。
近年、FTの親会社であるピアソンは、本業である教育関連事業以外のビジネスを売却してきた。しかも、その教育ビジネス自体も逆風の中にある。良くも悪くも、同社は、FTに忠実な親会社だったと欧米では広く考えられている。
一方で、ピアソンはFTにほぼ「無関心」な親会社だとも思われている。その点、日経はピアソンと違い、FTが最も必要としているものを提供できるに違いないと多くの欧米メディアは捉えている。それは、FTにさらに大きなスケールを与えることだ。
当然ながら、どの業界でも、スケールすることは重要な経営課題だ。そして、デジタル化に伴い広告収入が急減する中、業績悪化に直面しているメディアは少なくない。
FTのビジネスは黒字である。だが、今後もFT単体で十分な収益を上げ続けるのは容易ではないだろう。日経のような巨大なメディア会社は、親会社として、FTに成長を加速させる資金や手段を与えうる存在だ。今回の買収は、FTのビジネスをスケールすることにつながりうると評価する欧米メディアも多い。
FT記者のFT買収への反応
FTの東京支局に勤務する稲垣佳奈記者とリオ・ルイス記者は、日経による買収の目的は、「極めてドメスティックな日経ブランドをグローバル化し、なおかつデジタル・ジャーナリズムへシフトするための対応策だ」とFTに記している。
稲垣とルイスは、日経の岡田直敏氏が社長に就任してまだ4カ月しか経っていないことに注目しながら、日経は、高齢化による市場の縮小というほかの日系企業と同様の問題に取り組んでおり、海外進出はその対策のひとつだが、苦労していると主張する。
もっとも、日経は海外でブランド価値を確立するため、2013年には「Nikkei Asian Review(ニッケイ・アジアン・レビュー)」という英字新聞を創刊した。だが、部数は伸び悩んでいる。
FTの経営チームの今後に注目
今後、FTは日経のグローバル展開の大きな武器になると見込まれる。一方その“武器”を獲得するために、大きな対価を支払うことも事実だ。多くの国内外のコメンテーターは8億4400万ポンド(約1600億円)のディールは「日経のバランスシートを圧迫する」と語っている。
イギリス大手メディア「The Daily Telegraph(デイリー・テレグラフ)」のメディア取材担当アッリスター・ヒース記者も日経が“法外な値段を払った”と考える。彼は、その支出を正当化するためには、「非常に競争の厳しいマーケットの中、日経はFTのデジタルビジネスを拡大しなければならない」と筆者に語った。
筆者がさらに、ヒース記者に聞いたところ、日経は、「2014年9月にイギリスの大手メディア『Monocle』に出資したことで、英字メディア業界で大きな存在感を示そうとしていることは明白だ。ほかのメディアと違い非上場企業だから、極めて長期的な経営計画を立てることができる」と語った。
また、ヒース記者は、FTの経営チームが同社に残れるかどうかを疑問視している。「騒ぎが収まった後で、日経は自社の編集および経営の幹部を送り込むか、それとも欧米で募集するのかに注目している」
ウッドフォード氏の日経論
FTはピアソンの下で編集権の独立を維持してきたが、それが日経の下で継続できるのかについて、欧米ジャーナリストから注目されている。「ニューヨーク・タイムズ」の田淵広子記者は、日経が独立したジャーナリズムにコミットできるのか疑問視している。
newspicks.com
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コメント
注目のコメント
日本のジャーナリズムは”配慮”がありすぎる、って言いますがなんで配慮されるのかは突っ込んでないのね。
広告費?かもしれないけど、より本質的には、そう書いた方が或いは書かない方が売れるからですよね。基本的にジャーナリズムが軸では無いですよね。
もし、世間様がFTに載ったスクープを見て、だったらもう日経読まないよとなれば編集権は無くなるに等しいのでは。生かすも殺すも読書次第ぢゃないっすかねえ。jordan記者が、元オリンパス社長のマイケル・ウッドフォード氏ら海外有識者が日経のFT買収をどう見るか?について直撃しています。「日経は、日本企業の“スポークスマン”である」など、なかなかに辛口のコメントも。
自分がFTの記者なら率直に聞くだろうと思う。
編集権は独立しますか?
ではなく、
オリンパスのような事が起きた時に親会社として介入しますか?と。
早めに確認したほうがいい。
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