コンサルはもはや人気職種にあらず。このままでは未来がない

2015/8/14
実行支援に強みを持つ、老舗の戦略ファームA.T. カーニー。ほとんどの若手は常駐プロジェクトへ投入されるが、どのように「高級派遣」を超えた価値を出しているのか。また、「コンサルはもはや、人気職種ではない」との危機感を抱く中で、どのように既存コンサルの限界を突破しようとしているのか。岸田雅裕・日本代表が、近未来の新しいコンサルティング・ファーム像を提示する。

「コンサルティング・アディクト」にしてはならない

──戦略ファームの中でも、A.T. カーニーは実行支援に強いと言われています。
岸田 当社がオペレーションに強みを持っていることは間違いありません。トップに戦略を提案するときも、「紙芝居」を出して終わりではない。必ず現場レベルまで入り込み、実行支援を行います。
基本的に若手コンサルタントはクライアント先に常駐させ、組織の特性や社風、企業文化のようなものを勉強させます。そうでなければ、実行支援は「絵に描いた餅」になりますから。
A.T. カーニーの前身はもともとシカゴにあったコンサルティング・ファームですが、1939年にマッキンゼー・アンド・カンパニーとA.T. カーニーの2つに分かれました。
マッキンゼーはファイナンスや戦略立案を主眼としてニューヨークへ移る一方、A.T. カーニーは製造業の生産拠点の多いミッドウエストのシカゴに残り、実行支援型のコンサルティングを始めました。それが現在の姿につながっています。
業界別で言えば、日本国内では消費財や製造業、そして通信分野が得意です。
とはいえ、戦略と実行はサービスの両輪です。私たちは実行だけをやっているわけではありません。むしろ東京オフィスでは、全案件のうち、戦略案件と実行案件は半分ずつです。
──戦略と実行をセットにしたほうが、プロジェクトは売りやすいのですか。
私たちは「売る」という言葉を使いません。しばしばこの業界では「年契(クライアントとの年間契約)が売れた」と言いますが、ちょっと下品な言い方ですよね。
私たちは「Trusted adviser」として、クライアントが悩んでいるときに、「あの会社に相談してみよう」と思ってもらえる存在を目指しています。そこからプロジェクトに発展し、長期的な関係につながるのが理想です。
──実行支援の次の段階は、コンサルタントがいなくても組織が回るよう、クライアントの「自走」を促すことですか。
その通りです。同じ困りごとで再び声がかからないほうがいいんです。それはクライアントの課題が解決したことを意味しますから。ですので、コンサルティングの際には、最終的にクライアントが自走するところまで持っていくことが役目です。
仮に中期経営計画の策定を依頼されたとしましょう。最初は私たちが主導で案をつくります。ですが、2回目はクライアント主導でやってもらう。3回目以降は、私たちはほとんどコミットせず、最後にちょっと意見を述べるくらいです。
もし10週間のプロジェクトを契約しても、6週間でクライアントの自立が見えてきたら、「ここで終わりませんか」と切り出すべきです。それが真のコンサルタントです。
クライアントに寄り添いすぎると、「コンサルティング・アディクト(中毒)」にしてしまう。自力で問題解決する能力や意志がなくなり、何度も同じ案件をコンサルティング・ファームに依頼してしまう。私たちからすれば、おカネは儲かるかもしれないけれど、やってはいけない。問題が解決できていない証拠ですから。
コンサルタントにも「武士は食わねど高楊枝(ようじ)」という言葉が当てはまります。目先に転がる利益を追わない「高潔さ」が求められる。それが長期的な信頼につながります。
私自身、懇意にしていただいているクライアントがものすごく多いわけではないですが、それでもこの業界で働けているのは、15年以上も付き合っているクライアントから信頼してもらっているからです。
私が駆け出しの頃からお付き合いのある事業部長が、やがて社長になり、会長になって退くときに、後進の社長に「困ったときには岸田さんに相談しろ」と言ってくれている。そうした関係を大切にしていきたい。

パルコで学んだエゴイスティックな人の動かし方

──常駐での実行支援については、「単なる高級派遣では」という見方もあります。