アクセンチュアは「労働集約型コンサル」を脱却できるのか

2015/8/11
全世界で33万人の人員を抱える世界最大級のコンサルティングファーム、アクセンチュア。その中でたったの8000人だけ、「ブラックの名刺」を持つ部隊が存在する。通常のメンバーが白を基調とする名刺であるのに対し、黒の名刺を持つのは、経営戦略の立案に特化した部門「アクセンチュア・ストラテジー」のコンサルタントたちだ。戦略部門として、今後どのような成長の青写真を描いているのか。日本のアクセンチュア・ストラテジーを統括する清水新執行役員に話を聞いた。

優秀な人材を労働集約型の仕事に就かせるのは不道徳

──これまでのアクセンチュアでは「経営コンサルティング本部」が、クライアントの経営幹部に対して戦略立案から実行支援までを行ってきました。日本では2014年に組織改編を行い、新たにアクセンチュア・ストラテジー(戦略コンサルティング本部)という部門をつくりましたが、具体的に何が変わったのでしょうか。
清水 一番異なる部分は、アクセンチュア・ストラテジーがスケール(拡大)よりインパクトを追求する組織となったことです。
今、アクセンチュアは全世界56カ国に、33万人のマンパワーを有し、さまざまなサービスを展開しています。「コンサルティング」「デジタル」「テクノロジー」「オペレーションズ」、そして私が日本で統括を務める「ストラテジー」の5つに分かれています。
アクセンチュアは、これまでクライアントの“ビジネスパートナー”としてさまざまなサービスを展開することで成長してきました。
「経営コンサルティング本部」時代も、“ビジネスパートナー”になることを志向し、コンサルタントはクライアント先に常駐して事業部長とともに現場のオペレーションを回し、成果を出していく「トランスフォーメーション型」の仕事を重視していました。
「戦略から実行まで」を担い、現場に密着してきたことが昨今の二桁成長の原動力だったことは間違いありません。しかし、新たなテクノロジーがクライアントの経営環境を劇的に変化させているこの時代に、企業の進むべき道を示す「戦略サービス」はますます重要だと考えています。
アクセンチュア・ストラテジーは今後、ビジネスのスケールだけを追求することはしません。われわれが目指すものは「インパクト」であり、既存の延長線を越えた新たなビジネスモデルへの転換を企業トップに直接提案します。
コンサルティングはビジネスモデル的には、いわば労働者の量に依存する労働集約型のビジネスであり、これは20世紀のビジネスモデルです。
アクセンチュアを卒業して、起業したOBからは、「アクセンチュアの戦略グループには優秀な人が多い。でも、そんな優秀な人材を労働集約型の仕事に就かせているのは、社会にとって不道徳だ。だから優秀な人材を育て、どんどん輩出してほしい。そしてあなたも独立して、事業をしなさい」と言われます。
われわれはビジネスとテクノロジーにフォーカスして少人数で最大のインパクトを出すコンサルティングビジネスへと転換すると同時に、21世紀型の優秀な人材を育てることが使命であると感じています。

アジアに入り込めていない日本企業

──「インパクト」を重視する裏には、どのような環境変化があるのでしょうか。
日本企業の成長を取り巻く2つの要因があります。