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RECRUIT×NewsPicks 求人特集

「スタートアップ」だからつかめるチャンスとは

2015/8/5
大企業からスタートアップへ。大企業で勤め上げることが社会的ステータスだった時代から、スタートアップ経営幹部への転職がキャリアの選択肢として存在感を増している。リクルートとNewsPicksが共同で、スタートアップ幹部人材のキャリアストーリーにフォーカスし、同時に、求人情報も掲載する。

三菱商事、ゴールドマンを経てメルカリCFOに

転職を考えているとき、10人中9人に「リスクがあるからやめておけ」と言われたら、あなたは転職に踏み切れるだろうか。

「僕は、むしろチャンスだと思いましたね。みんながいいと思うところに大きなビジネスチャンスはないですから」と話すのは、メルカリCFOの長澤啓だ。ポロシャツにハーフパンツで姿を現した長澤は、すっかり「スタートアップ」スタイルだが、ほんの数カ月前まではゴールドマン・サックス証券の投資銀行部門に勤めるバンカーだった。

奇しくもゴールドマン・サックスとメルカリは同じ、六本木ヒルズにオフィスを構えている。スーツにネクタイ姿の元同僚と暑い日にビルで会うと、カジュアルな服装でいられる自分に長澤はちょっとした開放感を覚えるという。スーツとネクタイがビジネスエリートの象徴だったのは、すでに過去の話なのかもしれない。

「想像していた以上に、メルカリには優秀な人が多いですね。私が新卒で三菱商事に入社した1999年とはまったく違う風を感じます。キャリアステップのひとつとして、定着してきたのではないでしょうか」

メルカリ執行役員CFOの長澤啓氏

メルカリ執行役員CFOの長澤啓氏

ドライバーシートに座ってみたい

メルカリは、2013年よりフリマアプリを提供しており、現在急成長している。日本での成長を機に、世界展開を始めたばかり。会社が掲げるバリューに「Go Bold-大胆にやろう」がある。破壊的創造を目指して大胆にチャレンジし、数多くの失敗から学んでいこうというビジョンに、自分の次の道はこれだと長澤は思った。

三菱商事にいた頃は、自分のキャリアを自分で選んでいる感覚はなかった。大きな組織にいる限り、組織の人間として歯車のピースという感覚は消えなかったと思う。ゴールドマン・サックスでは、M&Aや株式上場に関する業務を担当していたが、いつも外野からのアドバイザーだ。

「ドライバーシートに座ってハンドルを握ってみたい」。これが、長澤がスタートアップへの移籍を決めた一番の理由だ。

「メルカリの経営陣と話して、絶対に世界でも勝てると思いました。だからこそ、日本発の世界的ITサービスが生まれるところを一緒に手伝いたい。こんなチャンスはまたとないでしょう」

長澤の言葉は自信にあふれていた。

社員一人ひとりが経営者

「スタートアップは自分の能力をストレッチしてくれる場」と話すのは、現在ライフネット生命の常務を務める中田華寿子だ。中田は今までのキャリアの中で、企業のスタートアップ局面を2回経験している。スターバックスと、現在、常務を務めるライフネット生命だ。

スターバックスに入社したのは、社員が50人未満で、まだ日本に2店舗目が出店した直後だった。その後、急速に店舗数が増えて成長していくスターバックスを支えた。

「スタートアップ期はとにかく何でもやらないといけない。新店がオープンするときには、メニューカードを1枚1枚つくったこともあります。とにかく、やることがいっぱいで、寝る時間もおしいほどでした」

でも、スターバックスのどこか温かみの感じるお店の雰囲気、コーヒーが大好きだったからどんな仕事も苦ではなかった。社員全員が同じ方向を向いて、すべてを楽しめた。これは、開業1カ月前から参画したライフネット生命でも同じだ。今までにない、ネットで加入できる生命保険を立ち上げることに一丸となって社員全体で突っ走れた。

「誰に聞いたらわかるとか、次に何を学べばいい、といった大企業なら当たり前にあるような体制や研修などはありません。一人ひとりに経営者マインドが求められるので、企業だけでなく、何より自分自身が成長します」

ライフネット生命常務取締役の中田華寿子氏

ライフネット生命常務取締役の中田華寿子氏

つらい時期を一緒に過ごせる経営者の存在

中田が強調するのは、大変な時期を一緒に乗り越えられる仲間の存在だ。創業者である出口治明と岩瀬大輔と話す中で、この人たちとならつらい時期を一緒に過ごせると思ったからこそ、ライフネット生命に入る覚悟を決められた。

リスクがあるという理由で、大企業からの転職に躊躇(ちゅうちょ)する人も多い。本人が心を決めても、家族が反対するケースもある。そんなとき、出口や岩瀬は家族にも会って説得する。そんな姿を見ていると、スタートアップはまるで家族のような存在だと感じる。出口や岩瀬についてきてよかった、と。

スタートアップへの転職には、確かにリスクはある。20年後に企業が存続している可能性は大企業より低いかもしれない。一時的に給料が下がってしまうことも多い。

「でも、リスクに見合う以上に貴重な経験ができることだけは保証します。本気でやりさえすれば、たとえそのスタートアップで大成できなかったとしても、次に、より自分のやりたいことができるスキルと経験が身につくはずです」

組織が小さくフラットで、一人ひとりに大きな責任がある。だからこそ、より大きな成長ができる。今、日本では数多くのスタートアップが、優秀な人材を求めている。大きな一歩を踏み出すチャンスは、すぐそこにある。(文中敬称略)

(撮影:福田俊介)