子どもをむしばむデジタル中毒
2015/07/16, The New York Times
現実の世界を「つくりもの」と思うように
中国で青少年のゲーム中毒が問題になっていることは、アメリカの親に対する警告でもある。特に、子どもが1日に何時間も液晶画面に張り付いている家庭にとって、他人ごとではない。
7月13日に米PBS(公共テレビ)で放映されるドキュメンタリー『ウェブ・ジャンキー(ウェブ中毒)』は、テレビゲームにのめり込む中国のティーンエイジャーの悲惨な姿を伝えている。数十時間連続でやり続け、食事や睡眠も取らず、トイレに行こうともしない。彼らの多くが、現実の世界を「つくりもの」だと思うようになる。
中国ではこの症状を臨床的障害と見なし、リハビリ施設に数カ月間、半ば強制的に収容する。時にはかなり厳格な心理療法が行われ、あらゆるメディアから完全に遮断するが、効果はまだ実証されていない。
アメリカでは「インターネット中毒」という臨床診断はない。しかし、子どもたちが現実世界のスイッチを切ってネットにつながっている時間は、通常の成長にとって健全だと専門家が考える長さを超えている。
まだ言葉をしゃべれない幼児までが、周囲の世界を観察し、世話を見てくれる人と触れ合うべき時期に、親の携帯電話やタブレットを握り締めてひとり遊びをしている。
家庭でルールづくりを
米国小児科学会は2013年に、「子どもと青少年とメディア」と題した声明を発表。カイザー家族財団が2010年に発表した調査から、衝撃的な数字を引用した。
それによると、「8~10歳の子どもは1日に平均8時間近く、11歳以上とティーンエイジャーは1日11時間以上、さまざまな種類のメディアを利用している」というのだ。最も多いのは昔から「ベビーシッター」の定番であるテレビだが、タブレットや携帯電話が取って代わりつつある。
「子どものメディアの使い方について、多くの親がルールをほとんど決めていない」と、小児科学会の声明は述べている。カイザー家族財団の調査に回答した人の3分の2は、子どもがメディアを使う時間について親がルールを決めていないと答えている。
親は、時に破壊的な子どもをなだめることができ、画面に集中している自分たちが子どもに邪魔されずにすむことをありがたがって、子どもがバーチャルの世界であまりに長い時間を過ごすことの潜在的な危険を意識していないようだ。
「子どもに1日中ディスプレイを見せて、自分で自分を落ち着かせる方法を教えるより、気を紛らわす材料を与えている」と、ハーバード大学医学大学院の臨床心理学者で、ベストセラー『The Big Disconnect: Protecting Childhood and Family Relationships in the Digital Age(大きな断絶:デジタル時代に子どもと家族関係を守るために)』の著者でもあるキャサリン・シュタイナー=アデアは言う。
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コメント
注目のコメント
これまで問題だったのは、親の方がデジタルとの付き合い方をよく理解していなかったということでしょう。会話が減るのは、テレビの視聴時間が増えた時にも問題視されました。デジタル以外に興味を持たせるということを意識しすぎず、世の中にはおもしろいものがたくさんあって、デジタルはその手段だということが分かるような環境作りが必要ですね。情報に関する教育も今は不十分だと思うので、そちらの整備も必要ですが。
こちらの記事はスマホ依存症について。
https://newspicks.com/news/1056480この手の話って毎度思いますが、デジタル機器がどうのという話ではなく、単純に家庭教育の問題といえるでしょう。デジタル機器が悪いのではなく、放任が行き過ぎて自分の子どもときちんと向き合えていない親が悪いと考える必要があると思います。
いろいろと興味深い調査。現代の親にとってデジタルとの付き合い方は世界共通の悩み。
「8~10歳の子どもは1日に平均8時間近く、11歳以上とティーンエイジャーは1日11時間以上、さまざまな種類のメディアを利用している」
「ティーンエイジャーが毎晩ベッドに入ってから送信するテキストメールは平均34通」
「子どもが2歳になるまでは、電子メディアには一切触れさせるべきではない。この時期は脳が急速に発達し、幼い子どもはディスプレイではなく人間とのやり取りから学ぶことが最適」