夏野剛の未来予測(下)「2020年、企業の命運は9割が経営者で決まる」
2015/07/16, NewsPicks編集部
Vol.3 “チャンピオン”を発掘できるトップかどうか
夏野剛の未来予測(下)「2020年、企業の命運は9割が経営者で決まる」
スマホはこれからどう進化していくのか。スマホの次に主役になるのは何か。iモードの生みの親であり、ドワンゴ取締役を務める夏野剛氏に、ポストiPhone、ポストスマホの行方を占ってもらった。(聞き手:佐々木紀彦・NewsPicks編集長)
夏野剛の未来予測(上)「2020年、ウェアラブル全盛時代がやってくる」
夏野剛の未来予測(中)「2020年、MVNO全盛時代がやってくる」
LINEはイレギュラーなヒット
──今後のモバイルビジネスで主役になるのは、やはりワッツアップ、スナップチャット、LINEといったメッセージアプリでしょうか。次のメガアプリは出てくるのでしょうか。
夏野:次のメガアプリヒットはないと思う。メッセージアプリはアプリの中でもほかにないメガヒットなので。
もともと、なぜメッセージ系アプリがここまで流行っているのかと言うと、ガラケーにあった携帯メールの穴埋めをしたからだと思う。スマホはPCの延長線上でつくられているので、スタンプやデコメといった、ガラケーに搭載されていたコミュニケーション機能がスマホにはなかった。なので、今までは、ガラケーにあってスマホにない機能をアプリが補完したという面が強かった。
本来ならば、アプリというのは、自分が好きなものをダウンロードしてカスタマイズする世界。そういった意味で、これからの時代は、爆発的なすごいメガヒットが出るのではなくて、自分の好きなもの、自分がハマるものだけを入れて、自分なりにカスタマイズして使う時代になっていくと思う。
──みんなが同じアプリを使うのではなく?
そう。今後は、メッセージアプリのように、みんなが使うようなアプリはなかなか出てこないだろう
──アプリ市場も成熟してしまって、ある程度基本的なものは出尽くしたということですか。
そんなことはないと思う。まだまだ盲点を突いたものがいろいろと出てくるはず。だから、そもそもLINEなどのメッセージアプリのほうがイレギュラーだったと考えたほうがいい。それは本来であれば、OS側に実装していても良かった機能だったから。
息を吹き返したPC勢
──LINEは海外展開も積極的に進めていますが、海外でも成功すると思いますか。
ちょっと難しいと思う。今、LINEの戦略を見ていると、何で勝負をするのかが少し曖昧になってきている感じがする。
やっぱり「コミュニケーション」という一番の必須機能をもっと強化していくべきだと僕は思うけれど、その部分の強化のスピードが遅い。ビデオ通話やカンファレンスコールがいい例。今、すごく不思議なことに、一時期スマホではまったく使われていなかった「スカイプ」が息を吹き返している。会社のPCやスマホで会議をやる場合は、ほとんどがスカイプになっている。
でも、あの市場こそLINEが取れたと思う。もったいない。スカイプは完全にスマホ対応が遅れていたけれど、メッセージアプリが違う方向に行っている間に追いついてしまった。
──違う方向とはどんなサービスですか。
タクシーとかフードデリバリーとか。そちらの方向に行っている間に、スカイプが見よう見まねでスマホ対応を進めて、アプリの世界でも少し復活してきてしまった。それがなんだか皮肉に見える。コミュニケーション系のサービスをしているのであれば、軸をぶらさずにコミュニケーション系のところを徹底的に強化していったほうがいい。
──世界で勝つのが難しいというのは、各地域のローカルのサービスが強いからですか。たとえば、中国ではWeChat(ウィーチャット)の存在感が大きい。
まあ中国の場合は仕方がないが、海外でもほかの国ならうまくマーケティングができれば、全然行けると思う。だから、一番大事なのはスピード。
──夏野さんから見ると、LINEは遅くみえますか。
少なくともサービスを全方位でやってしまっているから、遅れるのは当然。たとえば「スタンプを動画化したほうがいい」という話は、何年も前からずっと言っていたのに、やっとスタートしたのは去年。もったいない。
息を吹き返すPC勢
──モバイルの領域は動画も注目されていますが、そのポテンシャルをどう見ていますか。
動画といってもジャンルがいろいろあるので、ひとくくりにするのは難しい。
スマホの動画というジャンルは、フェイスブックに動画を貼り付けられるようになって、大概のことが必要なくなってしまった。自動再生もうまく機能している。フェイスブックもモバイルはすごく遅れていたのに、この1年半ぐらいでうまく盛り返した。
メッセージアプリがもたもたしていた2014年、2015年にフェイスブックやスカイプ、ヤフーといったPC系の人たちが息を吹き返して、スマホでのプレゼンスをグーンと上げてきた。本来ならこうした領域はすべて、メッセージアプリが取れるところだったと思う。
フェイスブックがワッツアップを買収したのも大きい。彼らは、たとえばワッツアップのユーザー数が少ないところは、もうワッツアップのマーケティングをしていない。
──今後5年を見据えたときに、夏野さんが注目している企業やサービスはありますか。
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コメント
注目のコメント
モバイルの未来、というか完全に経営学。佐々木編集長の引きだし方が上手なのか、夏野さんもうまく答えられてストーリーになってますね。
経営者(キーマン)本当に重要だと思います。彼らの「ちょっと先の視界感」が成否を握る事が多い。
当然、周りには優秀なブレーンがいて、共に組み立てているとは思いますが、そのメンバーでビジョンが見通せているか。
LINEのくだり
「タクシーとかフードデリバリーとか。そちらの方向に行っている間に、スカイプが見よう見まねでスマホ対応を進めて、アプリの世界でも少し復活してきてしまった。」
非常に同意。最近の新サービスは少し雑で、LINEでなければならない、今のLINEのプラットフォームを活かしていないサービス設計になっていない。
プライベートのシナジーとして、中心にチャットがあるはずだが、全くそれを利用しないサービスもあり、粗が目立ちます。
さて、日本のモバイル2020、このような勝者は生まれるのか?
これから海外ビッグ4の特集になるかと思いますが、やはり戦局は彼らのプラットフォームに握られてきている感も強い。
当然、弊社も私の肩書きの通り、指を加えているつもりはありませんが。。がんばろう。
#プロピッカーの牧野さんに、私のこの特集への意気込みのコンテキストを理解いただいていたとは、、感動しました。ますます止められない(笑)LINEとSkypeの下りは、Googleがサービス広げつつも検索がコアであり続け、磨き続けたのと比較すると面白い。
メッセージアプリ以上のアプリはでるか?個人的には出ないと思う。最近思っているのが、アプリではなく、またブラウザなりの世界に戻るのではないかということ。ウェブの歴史を振り返ると、ポータルブーム(ヤフー)があったが、結局ネットの本質は情報や機能の無限拡大で、無限にあるものから探すという点で検索エンジンの時代になり、ポータルへの一極集中は減少していった。
FBもメッセンジャーを切り出したりしていて、アプリの量が増えてくる。つまりネットの本質の情報・機能の無限拡大の結果、一個のアプリで出来ることの最適量を超えた。ニーズに応えるアプリがどんどんできると、その間の移動が面倒でしょうがない。そうすると結局何でもできるブラウザがいいのではないかと思い始めている。課金がアプリだとプラットフォーム任せにできるから楽といった部分をどう再構築するかという課題はある一方で、審査などで依存しなくて済むというメリットもある。
経営者に関しては、「一部の会社は9割が経営者できまる」と思う。その一部の成功例・失敗例を見ると「経営は社長が9割」という言葉が真実。それはビジョンを掲げて、人を吸引して、徹底して執行している企業。一方で全ての会社がそうではないし、昨日の椎名さんの記事のように要素がからまっている企業が多い。トヨタがあそこまで大きくなったのは経営者一人か?GEは?経営者を生むプロセスがあって、現場の技術力や、百年とかかけて醸成された企業文化もあったから。ターンアラウンド案件として有名なLEGOも、経営者として入ったクヌッドストープCEOの功績は言うまでもなく大きいが、功績を残せたのはLEGOが元々ブランドやコンセプトがしっかりしていたから。
それを活かせるか活かせないかの判断の9割が経営者という点では経営者は重要なのだが、同時に現場が活性化していなかったら持続しない。現場としても「経営者が9割なんでしょ」となる状況は活性化しにくいと思う。だからあえて「経営者が9割」とは言いたくない。
https://newspicks.com/news/1061485
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