[エルサレム/ベイルート/ドバイ/ワシントン 1日 ロイター] - イランは1日、イスラエルに向けて弾道ミサイルを発射したと発表した。レバノンの親イラン派武装組織ヒズボラに対する軍事行動への報復攻撃という。イスラエル側は180発を超えるミサイル攻撃を受け、防空システムで迎撃を行ったと発表した。
これを受け、米国は同盟国イスラエルへの全面的な支持を表明。一方でイランは、自国への攻撃があれば「強力な攻撃」を招くことになるとけん制した。
両国の戦火拡大への懸念から原油価格は一時5%急騰し、国連安全保障理事会は2日に中東情勢に関する会合を開催することを決めた。
イスラエルのネタニヤフ首相は安全保障関連の会議で「イランは今夜大きな過ちを犯した。代償を払うことになるだろう」と述べた。
イラン革命防衛隊は攻撃について、イスラエルによるイスラム組織指導者らの殺害と、レバノンとパレスチナ自治区ガザへの侵攻に対する報復だと述べた。イスラエルが報復に出れば、イランの対応は「より壊滅的で破滅的なもの」になると警告した。
イラン国営通信社によると、イスラエルの軍事基地3カ所が標的になった。革命防衛隊は、初めて極超音速ミサイル「ファタハ」を使用し、ミサイルの90%が目標に到達したとしている。
イランのミサイル発射後、イスラエル国内では警報のサイレンが鳴り響き、市民らが防空壕などに避難した。エルサレムなどでは爆音が聞こえた。国営テレビの記者らが生中継中に地面に伏せる姿が放映された。
イスラエル軍のハガリ報道官は、ミサイルの大半は「イスラエルと米国主導の防衛連合によって」迎撃されたとし、「イランの攻撃は深刻かつ危険なエスカレーションだ」と批判した。
また中部や南部にも攻撃があり、イスラエル軍の動画によると、中部ハデラの学校に大きな被害が出た。同国内では負傷者の報告はないが、占領下のヨルダン川西岸で男性1人が死亡したという。
米国防総省は、米軍艦艇がイランのミサイルに約12発の迎撃ミサイルを発射したと発表した。
バイデン米大統領はイスラエルへの全面的な支持を表明し、イランの攻撃は「効果がなかった」と述べた。また、ネタニヤフ首相と協議する考えも示した。
大統領選の民主党候補であるハリス副大統領は、イランが「中東の不安定化を招く危険な勢力であると明確に認識している」と述べた。
ロイターの記者は、隣国ヨルダンの領空でミサイルが迎撃される様子を目撃。イスラエル軍によると、イランの攻撃を受けてイスラエルの空域は閉鎖された。イスラエル軍はその後、警報や避難指示を解除した。
イスラエルのダノン国連大使は声明で「われわれはこれまでも国際社会に対し明らかにしているが、イスラエルを攻撃するいかなる敵も痛みを伴う対応を覚悟しなければならない」と言明した。
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、攻撃を「重大なエスカレーション」と非難。「われわれは今回の攻撃には重大な結果が伴うことを明確にしており、それを示すためにイスラエルと協力する」と述べた。
イランはシリアのイラン大使館周辺がイスラエルによるとみられる攻撃を受けたことを巡り、4月にもイスラエルを攻撃したが、米国防総省によると、今回の攻撃はその約2倍の規模だという。
イラン軍は声明で、イスラエルが報復攻撃を行えば同国のインフラが「大規模な破壊」に見舞われることになるとし、関与した同盟国の地域資産も標的にすると警告した。
イラン外務省は今回の作戦について防衛目的だとし、イスラエルの軍事施設と治安施設のみを狙ったものだと説明した。
国連のグテレス事務総長は事態悪化を非難し、「この状況を止めなければならない。攻撃停止が絶対に必要だ」と強調した。