「Decode Apps (デコード・アップス)」イベントリポート(第3回)
スシローのWeb開発者が語る飲食店アプリのジレンマ
2015/7/15
5月28日、新丸ビル10階のEGG JAPANイベントスペースで、App Annie主催のセミナー「Decode Apps (デコード・アップス)」が開催された。今回のセミナーでは、ゲーム以外のサービス業、小売業、外食産業におけるアプリの開発・活用にフォーカス。クックパッド、良品計画、すかいらーく、あきんどスシローのアプリ責任者が集まり、事例を紹介した。また、イベント後半には各者とNewsPicks編集長の佐々木紀彦のパネルディスカッションも開催。アプリの将来について活発な議論を繰り広げた。イベントの内容を全7回にわたってリポートする。
競合店で並んでみて、先を越させると「イラっ」としたものの……
田中:「スシローは予約できないのか」という意見は昔からもらっていたので、何度も何度も検討してきたんです。
ただ、検討はするものの、店舗ではお客さまがずっと並んでくれているので「待っているお客さまに予約で割り込みってどうなんだ」「店舗で待ってくれているお客さまが一番大事ではないのか」という考えが社内には強く根づいていました。
競合はすでに予約制度を取り入れていました。そこで、競合店に行って実際に並んでみたのですが、長い間待っていて、あとから来た人が先に案内されるとちょっと「イラっ」とする。でも、自分が予約で行くと、あまり待たずに案内してもらえて、すごくお得な気分になる。
そんな経験もあって、「予約ってどうなんだろう」と思う反面、うちも30代、40代のお子さま連れは非常に多くて、子どもたちは午後6時や7時にご飯を食べたいのに「午後8時や9時まで待ってください」と言うのも申し訳ない。そうかといって「午後5時くらいから並んでください」とも言いにくい。
混んでいる中、そんなお子さま連れのお客さまにどうすれば来てもらえるだろうと考えたときに、やはり時代の流れもあるので、「予約ができてもいいのではないか」「とにかくお客さまは待ちたくない」という共通認識の下、じゃあ「やってみよう」ということになりました。
ただ、そもそも座れる席の数は決まっているので、全部を予約で受けるわけにもいかないので、病院などで取り入れられている、ネットで待ち行列の一番後ろに並べる仕組みと併用しています。
従来は、店舗に来て発券機の番号札を取ることで順番を待つ仕組みでしたが、スマートフォンを使えば、家にいながら「スシローに行こう」と思ったときに予約して、家で家族との時間を楽しみながら、予約時間に店に行けば待たずに食べられる仕組みにしました。
8月ぐらいから、2カ月ぐらいかけて大阪や東京での店長会議などでディスカッションをして企画を練り、11月には調布の店でパイロット運用を始めました。そして、年末にかけて20店舗くらいで試して、年が明けてからは、400店舗すべてに一気に展開しました。
120万ダウンロード達成するも、「待ち時間の予測」で苦労中
田中開発段階で一番苦労したのは、待ち行列の管理です。不平等にならないことを目的に、システムで順番を制御することで、お店で決めたルールの順番の通り案内する仕組みをつくりました。
たとえば、予約が5組いたとき、いきなり予約のお客さまばかりが続けて5組も呼ばれるのは感じが悪い。だから、予約のお客さまを1組か2組入れたら、その後に店頭で待っているお客さまを入れる。
一方、番号を呼んだときにはいなくて、後から「呼ばれてました」と戻ってくるお客さまもいる。その場で順番を待っていた人と戻ってきた人、予約した人、これをどういう優先順位で呼ぶのかを、システムで制御しています。
今、苦労しているのは待ち時間の予測です。スマホで予約発券した際に、だいたいの待ち時間をお知らせしてるのですが、70組、80組になると、どうしても誤差が大きくなる。実際、ズレが大きくてお叱りを受けることもあります。
さらに、スマホで予約発券しているので、呼んだときにまだお店に着いていないお客さまもいる。3組くらい続けていなかったり、逆に、保留になっていたお客さまが続けて戻ってきたりと、待ち時間が変わることもあります。
待ち時間の予測、管理がどんどん複雑になっていっているので、発券方法に応じて保留率やキャンセル率を考慮したり、機械学習に取り組んだりといろいろ試しています。
3月から本格的に稼働させまして、5月末の時点で約120万のダウンロードがありました。多くのお客さまが使ってくれていて、ネットでも「これ、使えるやん」とお褒めの言葉をたくさんもらっています。
*明日掲載の「『利用してもらう頻度が低い』良品計画がアプリで目指したもの」に続きます。
(構成:ケイヒル・エミ)