「日本人滅びる」論争、柳井氏発言に賛否 前沢氏、三木谷氏らが見解
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インドの格言に「群盲象を評す」というものがあり、6人の盲人が象を触ってその正体を突きとめようとするが、触る部分が異なっているため、議論が噛み合わないという内容です。このケースもそれと近いものがあり、反論を取り上げるのではなく、それぞれの前提をクローズアップして、日本の有力者たちの発言を取り上げていただきたいと感じました。3名のものの見方は異なれど、私には、それぞれに共感するものがありました。
この論争は、とても重要です。経済の潜在成長率は、労働人口・時間の増加率と、資本装備率の伸び率、そして全要素生産性の伸び率の3つに分解できますが、柳井さん、前澤さん、三木谷さんのお三方は、この全要素生産性をどうやって引き上げるかについての議論をしておられるわけです。労働人口が減り、民間企業設備投資が伸びない日本では、全要素生産性が伸びない限り、経済は成長しません。
国民的議論が盛り上がり、これが自民党総裁選や立憲民主党代表選の争点になることを期待しています。マイナ保険証や確定申告云々よりもはるかに大切なことですね。売れば直ぐカネになる天然資源を持たぬ日本が一人当たりGDPで米国を抜いて世界4位になるほど豊かになれたのは、戦前の教育で勤勉であることの価値を徹底的に叩き込まれた人たちが復興の意欲に燃えて戦後の焼け野原から立ち上がり、猛烈に学び働いて新たな価値を生み続けたからでありました。そうした親の世代の背中を見て育った私は、そんな印象を持っています。
豊かさに慣れた国民はやがて国への依存心を強め、安心安全を旗印にして変化を嫌い、他者を巻き込んで一律的なゆとりを求めるようになりました。「少数精鋭で仕事するということを覚えないと日本人は滅びる」、「日本人らしさを生かして連帯」、「日本だけ『早く帰れ』では勝負にならない」とお三方の話にありますが、これらはすべて、かつての日本が持っていた”文化“であるように思います。それらを失うことで日本は一人当たりGDPで世界34位というところまで落ち続けて来たのです。このまま行けば、更に落ち続けることは必至でしょう。
天然資源に恵まれない我が国が豊かになる道は、昔も今も、勤勉に学び働いて人材の価値を高めて生産性を上げ続けるほかありません。お三方のお話の背後には、相通じる価値観が隠れているような気がします。