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“就職留年者”の受け入れ方針に変化

リクルート「30歳まで新卒採用OK」は、既卒差別の突破口になるか

2015/7/8

2016年卒業予定者の選考開始は、経団連指針の通りだと、この8月からだ。いよいよ今夏から、本命企業の面接に臨む就活生は多いはずだ。

今年から就活が3カ月後ろ倒しになったことから、その決着がつくのはだいたい10月頃。仮に本命に破れた場合、2016年卒業予定の就活生は、今度は年末のテストを受けるか受けないかや、“就留”(就職留年)するかしないかの決断を下さなくてはいけない。

実際、就留者は増えている。

ディスコが、昨年10月1日の時点で内定を得ていない2015年卒業予定の未内定者に今後の進路について聞いたところ、「卒業して就職活動をやり直す(就職浪人を決めた)」が3.4%だったのに対し、「留年して就職活動をやり直す(就職留年を決めた)」と答えた人は7.5%。前年の5.8%より増加した。

それもこれも、「既卒は就職に不利──。」が学生の間では、不文律になっているからだろう。

だが、すでに知る人も多いと思うが、リクルートの2016年4月入社予定の新卒採用では、就職浪人はもとより「30歳以下であれば応募可能」とする。

果たして、この施策は既卒差別の突破口になるのだろうか。

Pick 1:「30歳以下OK」元祖はライフネット生命

【Vol.10】新卒一括採用は、若者の“救世主”か“必要悪”か” NewsPicks(2015年4月28日)

もっとも、「30歳以下であれば新卒応募可能」な企業はリクルートが初めてではない。既卒採用に積極的な会社として、ライフネット生命保険が有名だ。同社では、新卒採用の応募条件を「学歴不問で、条件は30歳未満のみ」とする。

同社の社長兼COOの岩瀬大輔氏は、NewsPicksの記事で、

「当社が『回り道、大歓迎』と言っているのは、いろいろな経験をした人のほうが、その分いいインプットを得ていて、当社へ還元してくれるものが多いと考えているからです。(中略)でも、おそらく日本の企業では、外形的に切り捨ててしまうところが多いのでしょうね」

と答えている。

Pick 2:「既卒に内定」企業は1割強

卒業後3年以内既卒者の採用”(7ページ目) ディスコ キャリアリサーチ

2010年11月、政府は「卒業後3年以内は新卒扱いする」との指針を示した。それでも、既卒を歓迎する企業は、順調に増えたとは言えない。

ディスコの「2015年度・新卒採用に関する企業調査-内定動向調査」によると、新卒枠で既卒の応募を受け付けている企業は全体の66%。その数は増えているが、実際に内定を出した企業は全体の14.2%と1割強にとどまる。

なぜ日本企業の“既卒差別”は根強いのか? 複数の企業の新卒採用担当者に聞いたところ、「新卒時に“全落ち”した人との印象が強い」(メーカー人事)、「学生のフレッシュさがもうない」(マスコミ人事)、「就活の長期化により多くの企業と接触しており、耳年増な印象。わが社の色にすんなりと染まるか不安」(物流人事)などの声が大きい。

Pick 3:リクルート、「30歳以下」は新卒扱いのインパクト

新卒採用を、もっと自由に リクルートホールディングス

だが、代表的な就活ナビサイトの「リクナビ」を運営するリクルート自身が「30歳以下を新卒扱い」するのなら、日本の会社の既卒嫌いにも歯止めがかかるのではないかという声は大きい。

「30歳以下であれば応募可能」を、全面に打ち出した理由についてリクルートホールディングス、IT人材統括室新卒ウェブ採用グループグループマネジャーの田村博司氏、メンバーの夏目和樹氏の両氏はこう答える。

「今まで、新卒採用=学生のみという認識があり、就職希望者が自分のタイミングで就職活動ができないことが多かった。そこで、当社のほうから、『気にせずエントリーしてください』とアナウンスしている。30歳以下であれば他社で働いている人、フリーターの人でも構いません」

ちなみに、学歴に関しても「大学卒である必要もない」(田村氏)。

「たとえば優秀なエンジニアの中には、大学に行っていない人、就職せず、いきなり起業したり、フリーで働く人もいる。そんな方にも、ぜひ応募してほしい」(同)

ほかの企業での勤務経験がある人もOKということは、実質的な中途採用だが、「新卒での入社というフレッシュな気持ちを持っていればいい」(同)と太っ腹だ。

「最初の就職では、自分と合う会社に行けた人も入れば、そうでない人もいるのではないか。そんな人にも、新卒採用というかたちで、やり直しがきくことを示したい」(同)

同社が実際、どんな既卒者を採用したかについては、同社の採用活動が終わり次第、改めて取材したい。

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