(ブルームバーグ): 5日の東京外国為替市場の円相場は1ドル=143円台後半で推移。7月の毎月勤労統計調査(速報)で賃金の伸びが予想を上回ったことを受けて1カ月ぶりの高値を付けた後、日本銀行の高田創審議委員の発言を受けてやや売り戻されている。

高田委員は、これまでの米欧の利上げが急だっただけにその影響が時間を経て生じれば日本経済を下押しするリスクがあると指摘。同時に、金融政策スタンスの違いから金融市場に変動が生じる可能性もあるだけに「当面は内外の動向を慎重に見守る必要がある」と述べた。

当面は内外動向を慎重に見守る必要がある-高田日銀委員

外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、米国で雇用の冷え込みを受けて大幅利下げの織り込みが進む一方、国内では賃金上昇により日本銀行による早めの追加利上げが意識され始めており、「両面から円高・ドル安圧力が加わっている」と述べた。

実質賃金は2カ月連続増、基本給32年ぶり伸び-日銀正常化に追い風

厚生労働省が5日朝方発表した毎月勤労統計調査で、基本給に当たる所定内給与(一般労働者)がエコノミストが注目する共通事業所ベースで前年比3%増加。同ベースでの公表が開始された2016年以降で最高となった。日銀は2%の物価目標の実現のためには3%の賃金上昇が必要との見方を示している。

外為どっとコム総研の神田氏は、賃金上昇の加速で年内の日銀の追加利上げが視野に入ってきたと言う。一方、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利下げ観測が再度強まっており、円の対ドル相場は「8月5日の同141円70銭の高値を目指していく方向だ」とみる。

米国市場では労働省雇用動態調査(JOLTS)の7月の求人件数が2021年1月以来の低水準になり、9月のFOMCでの大幅利下げ観測が強まったことを受け、143円台後半まで円高が進んでいた。

米求人件数、全エコノミスト予想下回る-2021年1月以来の低水準

SBIリクイディティマーケットの上田真理人金融市場調査部長は、米国の求人数減少は「衝撃的」で、雇用の下振れ懸念が強い中でドルは買えないと指摘。ドル・円は142円台に入っても一時的とみるが、国内外の株価次第で8月5日に付けた「141円台までの円高・ドル安もないとは言えない」と話した。

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