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アップルミュージックはまだ始まったばかり

アメリカで6月30日にスタートした(日本は7月1日から)定額制ストリーミング配信サービス「アップルミュージック」。評判は高いが、一方でほかのストリーミングサービスとの違いがあまりわからないという声もある。とはいえ、まだ始まったばかりだ。

アップルミュージックは間違いなく大きく成長するだろう。その理由は3つある。

1:音楽の定額配信サービスには未来がある

この大きな流れは、アップルにも競合するサービスにも味方するだろう。私がこの手のサービス(月額制で、膨大な音楽ライブラリーからおすすめの曲を提供する)の良さを実感したのは最近のこと。

ビーツ・ミュージックのお試し版に登録したのだ。アップルに買収されたビーツ・ミュージックは、今回の新サービスに組み込まれるかたちで衣替えする。

ビーツのおかげで、私はここ数年で最も音楽を楽しんでいる。次々に新しい音楽と出会い、自分が好きな音楽についても多くの発見がある。

どのような場面でもビーツが提供するプレイリストを信用しているし、聴きたいと思う音楽はほぼすべて聴くことができる。私が大学時代から連れ回り、少しずつタイトルを加えてきた音楽ファイルより、はるかに頼りになる。これで月10ドルなら買いだ(アップルも月9.99ドル/日本は月980円)。

スポティファイやティダルなど、ほかの聴き放題の配信サービスも評判は上々だ。しかし現実には、ほとんどの人が過去に縛られている。13歳以上のアメリカ人のうち、定額制の音楽ストリーミング配信に登録しているのはたった5%だ。

「まだ草創期とも言えない」と、音楽情報ブログ「ミュージックウォッチ」のラス・クルプニック執行役員は言う。

「早くから使ってくれている人々も満足させていない」

業界全体で加入者が増えるにつれて、アップルミュージックはほぼ間違いなく、大きなシェアを獲得するだろう。おそらくすべてのアップル製品にプリインストールされ、ほかのアップルのサービスとも緊密に連携するのだから。

2:アップルミュージックは最高の音楽配信サービスになれる

音楽配信サービスは基本的に曲のレコメンドをアルゴリズムに頼っているが、アップルは常に人間がつくるプレイリストを重視してきた。ビーツもそうであり、アップルミュージックもそうなるはずだ。

アップルのティム・クックCEOは昨秋、アメリカの人気報道番組「チャーリー・ローズ・ショー」で次のように語っている。

「ある夜、(ビーツと)いくつかのサービスを聴き比べていたら、すとんと腑に落ちた。(ビーツは)聴いていてまるで違う感覚なんだ。その理由は、定額サービスでは人間の手によるキュレーションが重要だと、彼らがわかっているからだ」

これこそアップルが昨年、総額30億ドルでビーツを買収した大きな理由だ。

「私たちは(ビーツが築いた)定額サービスが気に入っている。彼らは業界で初めて、このサービスを本当の意味で正しく理解している」と、クックはウォール・ストリート・ジャーナル紙に語っている。

人間によるキュレーションは本当に大きな違いをもたらすのだろうか。「リビングで聴くラップ」「J・ディラの死後に発表された音源」「歌うことが好きなラッパー」と題されたプレイリストは、ビーツならではだ。いずれも、私が指定した状況や気分をもとに、おすすめの曲が選ばれている。

「スポティファイはアーティストを『おすすめ』して、『あなたが気に入るかもしれない』アルバムを選ぶが、ビーツは『あなたのために』と自信たっぷりに差し出す」と、ジェフ・ミラーはオーディオ情報のブログ「クラッチフィールド」で書いている。

「これには2つの効果がある。後で言い訳をしたり、言葉を濁したりしない信頼できる選曲者で、あなたのことを本当に知っていると確信できるのだ。『あなたのために』という触れ込みは心理学的な作戦かもしれないが、それがうまくいくのは、実際の選曲がかなり的を射ているからこそだ」

アップルミュージックでも似たようなことが期待できるだろう。

ストリーミング配信の特徴以外にも、アップルミュージックには競合サービスに勝る強みがある。iOSとSiri(シリ)と完全に連携している洗練されたデザインもそのひとつ。さらに、iTunesへのアクセスも簡単で、これまでのアルバムも継続しながら新しい音楽を購入できる。

「コネクト」はアーティストとファンをつなぐ機能で、コメントを投稿するだけでなく、アーティストからの投稿を見ることもできる。地味なツールだが、ファンにはうれしい機能だ。

3:「Beats1(ビーツ・ワン)」が世界的なブームを巻き起こす

アップルミュージックのメニューのひとつ、24時間放送のグローバルなラジオチャンネル「Beats1」は無料で利用できる。

うまくいけば、ラジオ局として史上最多のリスナーを獲得するだろう。世界のポップミュージックを定義し、音楽を通じてカルチャーを結びつける核になれるかもしれない。

私もぜひ聴いてみたい。人間の手を経たプレイリストは、アルゴリズムがつくるプレイリストより胸が躍るのだから、人間のDJの選曲ははるかにわくわくさせてくれるはずだ。

有料会員を直接増やすわけではないが、ビーツの名前が広がること自体が「のれん」となり、ブランド構築の強力な舞台になる。アップルミュージックの広告でも目立っているビーツのヘッドホンやスピーカーの売り上げを、大きく伸ばす機会になるはずだ。

競合サービスも早々に独自のグローバルな音楽ラジオチャンネルを立ち上げるだろうが、アップルとビーツほどクールにはやれないだろう。

唯一の「心配ごと」

ただし、私がアップルミュージックについて心配していることがひとつある。多くの人に影響する話ではないが、アップルの典型的な競争戦略に関することだ。

アップルミュージックは今のところ、ソナス・ファーベル製のスピーカーに対応していないのだ。ほかの音楽配信プラットフォームはほぼすべて対応しており、ソナス側はアップルと提携したいと願っている。

ソナスを愛用する私としては、スポティファイにしようと思う理由になるかもしれない問題だ。

実際、スポティファイなどほかの定額サービスも改良を重ねており、さらに成長する余地は十分にある。それでも、ほかの多くの分野と同じように、アップルの参入が遅れたのは、いずれ市場を支配するという前触れなのだろう。

(執筆:GUS LUBIN、翻訳:矢羽野薫、写真:Justin Sullivan/Aflo)

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