古くて新しい〈問い〉と向き合う|「ThinkVertical」立ち上げに寄せて(九龍ジョー)
危機の根底に流れるもの
猛暑日や集中豪雨の増加、農水産物の分布変化、海面および海面水温の上昇、桜の開花時期に象徴される季節のズレ……。気候変動については、ここ日本でもすでに多くの人が実感しているだろう。
今回、プロジェクトを始めるにあたり、いくつかのリサーチを行った。「脱炭素」をめぐる現状は、まさに宇野が書いているとおりである。
危機は「いま、ここ」にある。と同時に、私が感じたのは、これは「古くて新しい」問題でもある、ということだ。
人類と自然の関係を激変させた産業革命。工業化や化石燃料の使用。産業化、都市化にともなう環境問題。エコロジー概念は環境保護を意味するようになり、宇宙船地球号は人類に有限な資源というインスピレーションをもたらす。人新世が訪れる──。
根底には、一貫した問いが流れている。
「私たちは自然とどう向き合い、どのような社会をつくるのか?」
問題は常に古くて新しく、来るべき試みや選択は、過去への索引とともにある。
サーキュラー・エコノミーの車輪に残留するCO2に、たとえば方丈庵の息吹を重ねてみることも可能だろう。ハレーションの光の奥に何が見えるだろうか。交わしたことさえ忘れていた過去世代との、果たされぬ約束に気づくこともあるかもしれない。
「変化」と「持続可能性」
ここ数年、私は伝統芸能にまつわる仕事をしてきた。伝統とは、一定の時代区分を超えたものに付与される。だが、それは「変わらない」ことを意味しない。むしろ、「変わりつづける」必要がある。
天変地異、お上の意向、観衆の嗜好……といった不確定な要因に振り回され、外部環境に曝されながら、常に変化を怠らずにきたからこそ、いま伝統と呼ばれるものは私たちの目の前に存在する。
社会構造や生活様式の移り変わりに対応し、その波を乗り越えるためのこの変化を、「持続可能性」と言い換えてもよいだろう。
いまここにある〈変化〉に目を凝らすこと。
願わくば、読者の〈変化〉の起点となりうること。
当面は、これが「ThinkVertical」のミッションとなる。
私たちはこれから、さらなる探索を続け、発見や驚きをみなさんと共有していきたいと考えている。ときに迷い、意見をぶつけあうこともあるかもしれない。そのプロセスもまた、随時この場でオープンにしていきたい。
九龍ジョー(「ThinkVertical」チーフエディター)
▶ ThinkVertical Projectとは
様々な領域にまたがる経済・社会の重要課題を掘り下げ、ビジネスの現場の声を集めながら未来を探索するメディアプロジェクト。
ひとつのアジェンダを設定し、オープンに問い続けることで、一企業だけでは解決できない複雑な問題のいとぐちを探る。
トピックスオーナーは、NewsPicks Brand Designのシニアエディター、宇野浩志と九龍ジョー。最初のテーマ「脱炭素のリアル」では、年内3回の特集や関連企画を予定。寄稿者やパートナー、協賛企業も募集中。
問い合わせは think.vertical@uzabase.com まで。#垂直考