ツイッターは7月1日付でディック・コストロがCEOを退任し、共同創業者でモバイル決済サービス会社であるスクエアのCEOを務めるジャック・ドーシーが暫定CEOとして復帰した。これから、取締役会が設置する選任委員会が正式に後任探しを進める。
退任の発表から数日後、サンフランシスコで開催された「ブルームバーグ・テクノロジー・カンファレンス」に登壇したコストロに、ブルームバーグ・ビジネスウイークのブラッド・ストーンが退任の理由と後任者、そして次のステージを聞いた。
なぜ去るのか。そして次の挑戦は?
──CEOに就任して5年。「自分の役目は終わった」と思ったのはいつ頃ですか。
コストロ:私が用済みになったみたいに聞こえるけれどね。まだ終わっていない。
だいぶ前に取締役会の数人と話をしていて、昨年の終わりに私が言ったんだ。「来年の暮れには入社して丸6年になる。COOとして入り、2010年の秋に取締役会から(CEO就任を)頼まれた。そろそろいいだろう。後継の計画を考えよう」と。
つまり、昨年末から退任の準備は始まっていたんだ。
──CEOの交代を決断した取締役会では何があったんですか。
(退任発表の)1週間前だったと思う。2月に話し合ったときに、「6月の会議では交代の具体的な計画を決めよう」と言っていた。次のリーダーを本格的に探せるように、退任を正式に発表することを決めた。会議は3時間で終わった。
非公式に、内密に後任探しを始めても、何人かの候補者に会った時点で話は漏れる。ばかげたうわさが広まるだけで、会社に雑音が増える。
だから「公にやりたい、そのためにはジャックを暫定CEOにする必要がある」と考えた。暫定CEOを置かなければ、「いつ新しい人が来るのか」とまた雑音が増える。「ディックの残り時間のタイマーが点滅している」とね。そんなのはばかげていると思ったから、ジャックを呼び戻すことに私も賛成したんだ。
──ジャック・ドーシーにはスクエアのCEOという仕事もあります。2つの会社を経営する情熱と能力には驚かされますね。
ジャックは言うまでもなく、ツイッターというプロダクトの生みの親であり、会社の共同創業者。それと同じくらい重要、いや、おそらくそれ以上に重要なのは、プロダクトについて、すでに卓越しているプロダクトのさらなる可能性について自分の思いを雄弁に語れることだ。
この5年間で、私は彼ととても親しくなった。毎週火曜日の夜は一緒に食事をしている。今夜も会うよ。会社やプロダクトのこと、私たちが考えていることを何時間も話すんだ。
彼が(暫定CEOを)引き受けてくれてうれしいし、彼は今の経営チームのこともわかっている。私はうまくいくと思っている。
──ジャック・ドーシーは正式なCEOに就任するつもりはあるでしょうか。
それについてはジャック本人がコメントしていたはずだ。暫定CEOを引き受けて、取締役会がやるべきことをやる状況を整え、時間の猶予を与えるということだ。
成功は道をはずれたところにある
──ツイッターの次期CEOがあなたから学ぶことは?
私は、取締役を続けることになるから、役に立ちたいと思っている。組織に関する知識や、経営チーム、プロダクトなど、私たちが試行錯誤を重ねてきた問題について協力できるだろう。
大企業を率いるときや、組織のリズムをつくって迅速に行動しようとするときは、自分が学んでいることをできるかぎり早く確信したいし、変化や学習を妨げる定説にいつまでもとらわれたくないと思うものだ。その点で私の経験を役に立てたい。
──本気で後任を探すつもりなのか。ジャック自身が暫定ではないCEOになりたいと思っていて、その布石ではないのかという懐疑的な見方もあります。彼は(共同)創業者であり、プロダクトをきちんと理解しているから。取締役会は、本当に社内外で広く候補者を探すつもりがあるのでしょうか。
私たちは本気だ。取締役会は正式に後任を探しているし、特別委員会を設置して(経営陣から)独立した取締役を中心に、最大株主の取締役2人が選任にあたっている。
──取締役会には3人の元CEOがいます。正確には「元」が2人と、間もなく「前」になる1人。新しく加わるリーダーは怖じ気づくのでは?
そうは思わない。まず、私には「君はこれをこんなふうにするべきだ」といったうぬぼれがまったくない。私が自分で意識していることがあるとすれば、成功する道は実にさまざまあるということだ。「これのやり方はこれだけ」と決めつける考え方は良くない。
しばらくは骨休め?
──ツイッターの取締役は長期間、務めるつもりですか。
自分では期限は区切っていない。取締役会は常に新しいメンバーを求めている。新しい人材が私たちを助け、違う考え方を提供してくれる。取締役会や株主が「私は交代する時期」だと判断するときが来れば、もちろん応じる。
──7月以降は、ツイッターの取締役以外に何をしようと思っていますか。
本当に何も決めていないんだ。今回のような交代を経験する人にはいつも、しばらくゆっくりすればいいと助言している。自分もその通りにしようかな。
──あなたが自宅で小説を読んでいる姿は想像できません。
ジャケットをはおって、パイプをくわえて? いや、どちらも似合いそうにないけれど、とにかく何も考えていない。
──即興劇の役者に戻るつもりは? もし舞台に立つなら、この5年間の経験からどんな芝居ができそうですか。(編集部注:コストロは大学卒業後8年間、即興劇の役者をしていた)
即興劇の世界に戻るのは、賢い選択ではなさそうだ。さんざん野次られて罵倒されても、出演料はもらえないしね。わざわざ舞台に立つ必要はない。
ツイッターの素晴らしいところは、役者として舞台に上がらなくても、世界中からリアルタイムで野次が飛んでくることさ。(文中敬称略)
(執筆:Brad Stone、翻訳:矢羽野薫、写真:Bloomberg)
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