Yoshifumi Takemoto
[東京 8日 ロイター] - 日銀は8日、国債買い入れの減額と政策金利の0.25%への利上げを決めた7月30─31日の金融政策決定会合での主な意見を公表し、利上げ反対意見もあるなかで、物価の上振れリスクに対する懸念や、1%程度への段階的な利上げを提唱する意見などが出たことが明らかになった。
<実質金利25年間で最も深いマイナス>
委員の間では足元の物価について「輸入物価は再び上昇に転じており物価の上振れリスクに注意が必要」といった意見が出た。
「物価目標の実現の確度さらに高まった。ただし、人手不足の結果、供給不足・需要超過の業種が増えており、物価の上振れリスクに注意する必要がある」「海外のインフレやこれまでの円安による輸入物価の上昇に加え、タイトな労働需給や、労働時間の上限規制の影響もあり、価格上昇圧力が続く」との懸念も示された。
政策運営をめぐっては「物価目標実現の観点から、金利引き上げ・緩和度合いの調整が適切」「緩やかなペースの利上げは基調的な物価上昇に応じた緩和の調整で引き締め効果を持たない」などの意見が出た。
「経済・物価は、これまで示してきた見通しにおおむね沿って推移しているほか、輸入物価は再び上昇に転じており物価の上振れリスク注意する必要。物価目標の安定的実現という観点から、政策金利引き上げ、緩和度合いの調整が適切」との評価があった。「実質金利は過去25年間で最も深いマイナスとなっており、さまざまな指標でみた金融緩和の度合いは、量的・質的緩和期の平均的な水準を大きく上回っている」との分析も示された。
先行きの金利に関しても、景気が過熱も減速もしない中立金利は「最低でも1%程度とみているが、急ピッチの利上げを避けるため経済・物価を確認しつつ段階的に利上げしていく必要がある」との意見があった。
<国債買い入れ減額、慎重ならサプライズなし>
国債買い入れの減額をめぐっては「長期金利は金融市場での形成が基本で、予見可能な形での減額が適切」「国債買い入れ減額の目的は市場領域の回復で、金融引き締めではない」といった意見があった。「国債買い入れ減額は、慎重に進めれば市場にサプライズを起こさない」との見解も示された。日銀の国債大量保有に伴う「副作用は残り続ける、引き続き市場機能の状況を見ていく必要がある」との指摘もあった。
同時に「金融政策正常化が自己目的になってはならず、今後の政策運営を注意深く進める必要がある」との意見や、「現時点では経済の持続的成長を裏付けるデータはない」との利上げ反対意見もあった。 「足元は賃金上昇の波が幅広く浸透し、その持続可能性の高まりを見守る忍耐が重要な局面」との声も出た。
財務省の出席者からは「政策金利変更は、物価安定目標の実現に向け必要と判断されたもの」「政策の趣旨について、対外的に丁寧な説明を期待する」といった意見が表明された。