2024/8/4

【株価崩壊】エネチェンジを狂わせた「1000億円の呪縛」とは

NewsPicks NY支局長
「これは、もしかしたらヤバいんじゃないか…」
今年3月、エネチェンジの「会計問題」が発覚したときに、一番最初に感じたことだ。
正直なところ、自分は企業財務や市場周りを専門的に見てきたわけではないので、SPCをめぐる会計スキームや、監査法人との関係性など、「お金周り」のことは専門的にはよく分からない(その点は👇を参照)。
ただ、エネルギー周りのことなら分かる。
特に、この分野で著書を出したばかりだった筆者は、今回疑惑の舞台となったエネチェンジの充電事業のスタート時に取材をしていた。だから、当時の城口CEOが語っていた前提と、現在では、エネルギー、脱炭素をめぐる環境はあまりにも変わっていることを認識している。
一言でいうと、当時華々しくお金を集めた世界中の「脱炭素ベンチャー」の多くが、死屍累々となっているのだ。
だから、不正は分からないが、城口氏に「焦り」があったことだけは想像できた。
特に、エネチェンジという会社が城口氏のリーダーシップの下で、かなり株価を重視していたのは、上場時から明確だったから──。特集第2回は、上場の脱炭素ベンチャーの観点から、今回の問題を深掘りしていく。
INDEX
  • 誤算①人生を「全BET」した事業
  • 誤算②ベンチマーク企業は「ほぼ死滅」
  • 誤算③「脱炭素の巨人」たちも大苦戦中
  • 誤算④時価総額「1000億円」の呪縛
  • 誤算⑤上場から常に「割高」だった

誤算①人生を「全BET」した事業

まず、エネチェンジがEV充電設備に乗り出したのは、2021年末のことだった。
当時、時価総額がピークの1100億円に達したばかりだったエネチェンジは、その勢いで42億円の資金調達を実施し、その多くを新たなEV充電設備事業に割り当てた。
今回のインタビューで、城口氏は当時の決断を振り返っている。