【小林製薬】紅麹問題で社長辞任。拭えぬガバナンスの大問題
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注目のコメント
報告書をしっかり読み込んだ良記事。
その上で、コメントするなら、記事後半で「元会長のら200万円報酬」が象徴的に取り上げられているが、実はもっと重要なのは、「ガバナンス不全の背景にあった創業家の経営に対する影響力排除」だということ。再発防止策の策定にあたっては、彼らの持ち株をどうするかがきちんと示されることが必要です。それは、取締役会から彼らを排除しても、彼らが大株主である限り、取締役会の決定を株主総会で覆すことができる、イコール社員は創業家の顔色を伺い続けるからです。
小林製薬によるリリースは同社のHPで見ることができますが、はじめの9枚までは検証委員会の報告書を受けた小林製薬としての解釈が含まれる部分なので、そこは飛ばして、まずは10ページ目からはじまる61ページの報告書本文をざっとでいいので読むことをすすめます。
https://www.kobayashi.co.jp/newsrelease/files/pdf/20240723_01.pdf
正直、なぜ「事実検証委員会の調査報告を踏まえた取締役会の総括について」などと銘打った前置きを、一番読むべき「報告書」の前に一体のファイルとしてつなげてHPに掲げるのか、その意図が私にはわからない。別のリンクにしたら良いのに、とシンプルに思います。
報告書をみると、①なぜ社内の信頼性保証本部など内部統制・品質管理部門の牽制が効かなかったのか、②なぜ社外取締役の牽制が効かなかったのか(上場会社としてはここが重い)、③なぜ「届出食品による健康被害の発生及び拡大のおそれがある場合は、消費者庁食品表示企画課へ速やかに報告する」というガイドラインが顧みられず「因果関係が明確な場合に限る」という社内運用がなされたのか(食品を扱う会社としてはここが重い)、という疑問に対する答えがまとめて書かれていて、わかりやすい。
それを踏まえて、今回の人事処分をみたり、近く報告があるという(ファイルの冒頭部分にんる総括の9ページに書かれている)再発防止策をみれば、それらが納得感のあるものであるか、そうでもないかを考える材料になると思います。。
いずれにせよ、本件は業種を問わず様々な企業で他山の石として参考にすべき材料の多い事案だと思う。なによりも「報告書」それ自体を、それを踏まえて、次に出てくるはずの「再発防止策」読むことをすすめます。創業家が会長と社長を辞任し、経営体制は刷新されたようにも見えますが、小林一雅会長は特別顧問に就き、息子の小林章浩社長は代表権のない取締役に残ります。まだまだ小林家は強い影響力を持ちそうです。
人事と同時に発表された外部の弁護士による調査報告書には、小林製薬のガバナンスの問題点がこれでもかと記載されています。今回はその中からポイントを絞って解説します。
特別顧問の一雅氏に月200万円という「破格」の報酬が支払われることが発覚するなど、未だ疑問符のつく対応がみられる小林製薬ですが、健康被害に遭われた方々への補償が優先されることを望みます。小林製薬といえば、長らくエクセレントカンパニーの一角として語られることの多い会社でした。ただ、このような非常事態、ピンチになったときに真の組織の姿が浮き彫りになるのが世の常であり、なんとも皮肉です。
攻めには強いけど守りに弱いことを露呈してしまう。このような日本企業が後を絶たずにとても残念に思います。取締役会トップの首を挿げ替えても創業家が大株主として居座る状態ではガバナンスの問題はどうにもならないものです。
創業者が大株主を兼ねることには良い面もあるので(事業に専念できたGoogleなど)十把一絡げにダメと言うつもりはありませんが、一度でもこのような深刻な問題を起こした場合は創業家の株を強制的に売却させるなどの措置があってよいと思います。