【橘玲】「人口の1%」のための超自由主義が、世界を覆い尽くす
- マスクはなぜXを買収したか
- 虐げられてきた天才たち
- トランプの陰に「あの男」
- イーロンの「トランプ支持」
- テック進化で、世界は二極化する
- アルトマンは「救世主」か?
- 自由と合理性を憎む日本人
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並外れた世界的成功をする人間というのはだいたい正常ではないし、マスクのような薬物中毒者も多いです。それか、レーニンみたいに極度の思想中毒者であるか、です。
少数の優秀な者が技術を総動員して統治するのが合理的、という思想は、それこそ古代ギリシアのプラトンからあるし、めずらしいものではありません。世界でもヨーロッパで偏って発生する思想ですが。ジオン公国総帥のギレン・ザビなどもこのタイプです。
マスクは、そういう系譜でいえば、レーニンやヒトラーの系譜に位置する人物です。
このタイプが日本で政権を取ったことはありません。しいていえば豊臣秀吉や大久保利通が近いですが、まあ、それでもヨーロッパ基準とはほど遠いです。
リバタリアンでありながら少数の優秀な者が統治する、というのは、それは自由な社会といえるのか?と、当然疑問に思われるでしょうが、この場合のリバタリアンというのは、「少数の優秀な者が自由」という意味で使われます。
少数というのはどれくらい少数かというと、全人類の1%なら8000万人くらいですが、実際はもっと少ないでしょう。
日本人だと上位0.5%の50万人くらいになるでしょうが、日本社会にとどまるかぎりは、あのてこのてで妨害されて「少数の優秀な者の自由」を行使できないでしょうから、日本社会から離脱するか、外からやって来た者でないと無理でしょう。
さすがに、米国を含め、1人1票の民主主義が機能しているうちは、この思想を実現化することはできません。だからプラトンもレーニンもヒトラーも民主主義を否定した訳ですが、平穏無事な社会ではこの思想の実現は妨げられます。
戦争が必要になります。マスクも、現在までは戦争など関心はありませんでしたが、自分の野望がこのままでは達成できないと悟ると、戦争に活路を求めるようになるでしょう。
"皮肉なのは、知識社会から脱落した白人労働者階級が熱狂的に支持するトランプを、知識社会の最大の勝者であるテクノ・リバタリアンが財政的に支えていること"
まさに。
そして、この皮肉に支持者が気づいていないという皮肉。
共和党の副大統領候補のバンス上院議員もこの構図の中で、反トランプから親トランプへとピボットしたように思います。
「X特集」2日目は、作家の橘玲さんが「イーロン・マスクの思想」を掘り下げます。キーワードは、テクノ・リバタリアン(テクノロジー至上主義+超自由主義)。イーロンのみならず、話題の中心はピーター・ティール氏を始めとした、シリコンバレーの巨人たち全般に及び、現在の世界の状況を理解する一端になると思いました。「天上人」の話と思いきや、我々の生活にも地続きな、実はリアリティのある話だと感じます。
本文では、マスクやティールが、なぜトランプ氏を支持するのかなども解説いただき、アメリカの現在の政治状況も垣間見えました。基本的に私も「自由主義」の考え方に同意なのですが、社会全体がどこまで自由を追い求めるべきか、については、少し立ち止まって考えたいと思わされたインタビューでした。
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