マイクロファイナンスは貧困削減に役立つのか
コメント
注目のコメント
(追記:質問への回答@タイ時間8:26。これで終わりです。有難うございました。)
1,
>あんまりマイクロファイナンスにこだわりすぎるのも如何なものかとも思いました。貧困削減を目的としているのならば、マイクロファイナンスからのアプローチは補助的なものでしかなく、ふつうに経済発展、雇用創造が大事になってくるのでは。
「こだわり」が何を意味するのかはよく分かりませんが、貯金したり、振込してもらったり、お金を借りたりできなかったら困りますよね。金融がない場所に仕組みをつくって提供する、という話なんだと思います。
2.
>①マイクロファイナンスが貧困削減に役立つ事が証明されていないという事はそもそも金融アクセスのチャンス有り無し以前に健康・教育・文化の違いといった 他の要素が貧困削減要素としては大きいのでしょうか?それともまだまだマイクロファイナンス自体改善の余地があるのか、それとも計測が難しいのか慎プロピッカーの肌感覚で構いませんので教えてもらえたらと思います。
個別のマイクロファイナンス機関の貧困削減パフォーマンスがよいということは肌感覚としてあると思いますが、マイクロファイナンスそのものが貧困削減に効果があるかというと、正直よく分かりません。金融は社会インフラで、それがあるか無いかであればあったほうが良いですが、あるから生活がかならず変わるかというとそうではないと思います。
>②私が海外を旅した感覚ではテレビのない地域でもI phone、I padが普及してたりします。こういったものはマイクロファイナンス運営上、コストという面で大きいと思います。この辺りは国によって違うと思いますがどうなんでしょうか。
そうですね。モバイル端末を使って金融サービスを改善する取り組みはうちもやっています。
3.
>カンボジアはマイクロファイナンス大量にあったけどね。
カンボジアはそうですねー。中央銀行がきちんとグリップしてはいますが、そのうちいくつかのマイクロファイナンス機関はそのうち大変なことになると思います。
4.
>貧困削減に役に立つというレベルではない気がする。普通にサービスの1つとして考えるべきでは?
はい、それでいいと思います。個別のマイクロファイナンス機関が貧困削減理念を掲げてやるのは、それはそれで素晴らしいことで頑張りたいですが。
5.
>踏み倒されないの?
世界平均でここ10年で貸倒率は3%を上回ったことがありません。
(追記:質問への回答@カンボジア時間12:31)
1.
>マイクロファイナンス機関といわゆる「銀行」は異なるものという前提(勘違い?)があるようなのですが、違いはどこにあるのでしょうか。資金調達方法の違いでしょうか。それとも、単回貸出金額の絶対額の大小で決まるのでしょうか。
マイクロファイナンス機関=マイクロファイナンスを行っている金融機関なので、保有ライセンスは銀行、ノンバンク、その他金融ライセンスなど様々なものになります(国によってはまだライセンスが明確に存在していなかったりします)。とはいえ、大抵のマイクロファイナンス機関はせいぜいノンバンク止まりで銀行ライセンスを持っているものは少数なため(全体の5%にもならない)、よくマイクロファイナンス機関(ノンバンクその他という前提)と銀行を対比させることとなります。
2.
>何とも歯痒い論旨でしたが、生活が大幅に改善している例はもっとポジティブに出して頂きたいなと、マイクロファイナンスの可能性を信じている人間としては感じます。慎さんがご存知の印象的な例などは御座いませんでしょうか?
一番分かりやすいのは女性のエンパワメント系ですかね。マイクロファイナンスの借手の女性が家庭内でのポジションが向上し、横柄で威圧的だった夫に対して意見が言えるようになった、みたいな話はとてもよくあります。とはいえ、こういう物語の積み重ねで「意味がある」と言い張るのは無理があり、マイクロファイナンス機関側が自制すべき点だと思います。
あと、個別のマイクロファイナンス機関の貧困削減パフォーマンスが有意に高いとかは多分あると思います(研究とか見つけてないですが)。でもそれは、マイクロファイナンスそのものが貧困削減効果があることを実証はしないわけで。
3.
>マイクロファイナンスが効きやすいバングラデシュの国民性によるものも大きいのではないか?
国民性も地域性もあります(例えば、「あの地域の人はお金を返す習慣がある」みたいなものは実際に新しい支店をどこに置くのか会議をするときとかに聞かれます。真偽の程はさておき)。とはいえ、マイクロファイナンスのやりやすさで一番効くものの一つは人口密度ですね。人口密度が低い地域だと、オペレーションのコストが非常に高くなります。
4.
>貧困削減に取り組む人が、自身の生活に苦労するというのは、なんとも皮肉な話じゃないでしょうか。優秀な人材を引っ張ってくるためにも、ある程度の給与は必要かと思います。
まだローンとエクイティで10億円も調達できていないスタートアップなので、自分たちの給料が低いという問題がありますが(ただ途上国メンバーの給料はまあまあ高いです)、今年中には解決したいです。
5.
>まあ、消費者金融とか商工ローンと同じでしょ笑
事業金融が多いので、商工ローンにとても似てると思います。普通の商工ローンが不採算とみなして融資しないような先に、融資する仕組みを作っているということだと思います。(個々の事業者は色んな思いを持っているのでしょうけれども)
住田さんが書いていた「こんな難しい研究しなくても、教養も信用もない人たちに誰が金を貸すか?って話でしょ?」ということですね。日本の商工ローンが貧困層の自立向けに融資するみたいな感じでしょうか。
6.
>これさ物理的に実証させずにマルチエージェントのシミュレーションとかで仮設をたてるのはダメなの?
マイクロファイナンスについて、実験系の研究も結構ありますが、それはどちらかというと貧困削減効果よりも、融資スキームの有効性が本当にあるのかの検証に用いられていますね。
(元コメント)
今回でマイクロファイナンスはおしまいです。マイクロファイナンスが貧困削減に役立っているという明確な証拠はないこと、だけど金融アクセスがあることには意義があること、そしてマイクロファイナンスの行員は普通に週末クラブに遊びに行ったりしてその様子をFacebookにアップしまくっていること、について書いています。
今回も2015/06/25の日本時間9時までに頂いた質問には、回答します。理念は共感、本当にそう思う。ただ現実論として、組織が小さいうちは共感する人だけで構成できるかもしれないが、社会に影響を与えるためには共感しない人も入ってくる。
個人的にはそれはしょうがないと思うし、入った後で共感してくれるようになってくれればと思う(組織が小さいうちは別)。そのなかで「聖職者」である必要は全くなく、むしろコスト以上にリターンを生むかという点のほうが重要。よく出てくる例として、シンガポールの官僚が民間トップ企業なみに給与もらえるといった話があるが、それで全体が恩恵を受けられるなら全く問題ないと思う。「聖職者」を求めることによって社会全体が良くならないことのほうがよっぽど問題。貧困からの脱出には、「カネ」とか「雇用」は不可欠ですが、それらがあれば貧困から脱出できるというものではありません。だから、マイクロファイナンスのような取り組みが、貧困削減効果を立証できなくても何の不思議もありません。ただ、貧困に陥っている人たちには、「カネ」へのアクセスの機会が十分ではないのは紛れもない事実です。チャンスを提供するのがマイクロファイナンスの意義なんでしょうね。