[東京 19日 ロイター] - 6月ロイター企業調査によると、持ち合い株を保有している企業が全体の6割にのぼることがわかった。保有企業の8割は取引関係維持などを理由に「売却予定はない」と回答した。

また自己資本利益率(ROE)を基準とする自社の収益力について、国際標準以下と認識している企業が全体の7割を占めた。有効な設備投資ができていないことなどが背景にある。 

この調査はロイター短観と同じ期間・対象企業で実施。資本金10億円以上の中堅・大企業が対象。6月2日─15日に400社を対象に行い、回答社数は250社程度。

<持ち合い株保有、商慣習上必要との声>

6月1日に導入されたコーポレートガバナンスコードでは持ち合い株について保有理由などの説明が求められている。持ち合い株を保有している企業は非製造業では5割程度なのに対し、製造業では7割となっている。

保有企業のうち、今年売却する計画を尋ねたところ、全株、ないし大部分を売却するとの回答は合わせて3%に過ぎず、一部売却予定が19%、売却予定なしが79%となった。

売却しない理由について「長年の取引関係継続のため」(金属製品)との理由を挙げる企業がほとんどだった。「海外投資家からは不合理と見られるが、安定的、かつ長期にわたる取引強化のためには有効な手段」(化学)との見方や、「商慣習上必要」(自動車)だとの意見もある。

もっとも売却予定があるとする企業からは「事業に関連のない持ち合い株は、株高の現状を考慮しながら、利益が出ているものは売却を検討する余地が十分ある」(小売)といった声も出ている。

<収益力は「国際標準以下」、情報通信を除く全業種で過半数>

収益力の自己評価について、ROE10%の達成を国際標準並みとした場合、全体で68%の企業が「国際標準以下」と回答した。

「リーマンショック前までの増収増益でたまった資本がそれ以降横ばいで、強気の投資ができていない」(精密機械)、「市場競争を勝ち抜くためには、ある程度の値下げはせざるを得ない」(輸送用機器)、「新興国への過去の投資が実を結んでいない」(輸送用機器)、「ある程度の自己資本の厚みは必要」(非鉄金属)など、様々な要因があげられる。

業種別でみると、情報サービス・通信以外の全業種で、回答企業の過半数が「国際標準以下」と回答。海外企業に劣らない収益力を持つ日本の産業分野は、情報関連以外に見当たらない状況とも言えそうだ。

他方で国際標準以上と回答した企業は8%、国際標準並みとの回答は24%となった。

「昨年は大規模な自社株の買い取り、消却を行った。常いにROEを意識した経営を行っている」(電機)、「償却済みの稼働資産が多く、低金利で支払い利息が低く抑えられている」(不動産)といったコメントがある。

<大手企業の不正会計、日本企業の信用性毀損の懸念は46%>

東芝 <6502.T>の不正会計問題が明るみに出たが、日本を代表するような大手企業の問題について、海外投資家への影響を尋ねたところ、「日本企業全体の信用性を毀損する」との回答が全体の46%を占めた。

「あれほどの企業でまともな決算ができないとなると、それ以下の規模の企業への不信につながる」(情報サービス)、 「せっかく(コーポレートガバナンス)コードを充実しても意味がなくなる」(小売)、「のれんの償却など日本の会計基準が近頃見直されていただけに、日本の会計基準そのものへの不信につながらないことを望む」(サービス)など、懸念の声が上がっている。

他方で、当該企業の信用毀損にとどまる、ないしは当該企業を含めてあまり影響はないとした企業は54%。

「オリンパスやライブドアなど過去の問題は、個別企業の信用毀損に留まった経緯がある」(電機)、「海外でも会計不正はたびたび発生しており、投資家には織り込み済みの材料」(小売)との見方もある。

*カテゴリーを追加しました。

(中川泉 梶本哲史 編集:石田仁志)