死者新たに76人 小林製薬の紅麹サプリ―厚労省
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小林製薬の紅麹サプリメントについては、食品のカテゴリーに分類されているため、食品衛生法により対処されています。しかし、この「食品」は、抗高コレステロール薬の成分の発見のきっかけになった「紅麹」由来の成分にサプリメントの効果を期待したうえ、高濃度で含有させるなど、医薬品に近いものを意図していたと思います。
医薬品の場合は、このような効果が期待できる場合、効果の検証および必ず付随する副作用の検証を10年近くの時間をかけて、高度な監視の下で治験ボランティアや実患者に対して行い、その結果をもって、販売許可が検討されます。製造品質の管理も極めて厳格に行われます。
医薬品の場合は、種類により、投与後に重篤な副作用が疑われる事例はめずらしくありませんが、発生した場合はその後第三者委員会にて因果関係が調査され、医薬品によるものか否かが判定されます。副作用のない医薬品が良い医薬品であるというのは完全な誤解で、正しくは、良い医薬品とは投与した時のベネフィットが副作用等のデメリットを大きく上回るものを指します。したがって、重い副作用が発生する可能性があったとしても、それを上回るメリットがある医薬品は販売し続けられますし、治療に当たる医師は通常、ベネフィットとリスクを伝えたうえで、患者から投与の同意を取ります。
今回のサプリメントは、上記のようなことが検証されずに販売が可能だった商品(食品)です。ですから、想定されるリスクがわかりにくく、原因究明にも時間がかかっています。また、話題になってから多くの申し出を受けていることから、多くの服用例が寄せられていますが、死者数76人という数字は、第三者委員会にて因果関係が科学的に調査される前のものだと思います。
いずれにせよ、食品は「薬効」は想定されていません(食品としての商品で薬効はうたえません)。したがって、副作用のような症状が出てはなりません。引き続き、しっかりした調査が求められます。紅麹サプリメントの摂取後に死亡したということに関して、因果関係は不透明であり、この人数については評価をするのは難しいでしょう。つまり、紅麹の内服とは関係ない病気(がんや感染症など)で亡くなった方が多い可能性があります。
腎障害が起こったという健康被害に関して腎障害の具体的な内容がこれまで不透明でしたが、今年の5月上旬に日本腎臓学会が医師に対してアンケート調査を行い集計した189例の疾患の詳細が報告されました。
https://jsn.or.jp/medic/newstopics/formember/post-558.php
患者の年齢は50歳代が最も多く約40%で、次に60歳代が30%程度でした。女性比率は65%と女性の方が多く報告されました。患者の多くがFanconi症候群と呼ばれる腎臓の病気の特徴と合致する電解質の異常を認めました。また医師を対象にしたこのアンケートで報告された中では、死亡した事例はみられませんでした。
あくまで後方視的なアンケート調査であり様々なバイアスが隠れていますが、医学的な妥当性を考慮すると死亡との因果関係がはっきりしているケースは少ないのかもしれません。今後のさらなる報告が待たれます。5人からいきなり70人超に増えるはずはなく、経時的に小林製薬に報告されていたものをまとめて厚労省に報告したと考えられます。
医薬品や食費の健康被害では、服用・摂取後に起きた何らの良くない事象「有害事象(医薬品・食品との因果関係は問わない)」は速やかに報告すべきもの。とりわけ死亡事例はなおさらです。
小林製薬側は「すでにほとんどの製品が回収されているから」という論理かも知れませんが、倫理観を疑いますし、消費者からの信頼を著しく失う行為だと思います。