進撃の中国IT

「小米」から「大海」へ泳ぎ出すシャオミ・エコシステム

シャオミ、動画コンテンツサイト100社との連盟化を発表

2015/6/16
大手ポータルサイト「新浪網」のコンテンツ編集長だった陳彤氏が、シャオミのコンテンツ運営・投資担当の副総裁に就任したのが半年前。雷軍CEOは新加入の陳氏に10億ドルの資金を任せることを約束した。そして6月10日、シャオミはテレビ部門のコンテンツとシャオミ・ルーター事業において初めての「成績」発表を行った。

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ライバルを引き離す、100社以上の動画サイトとの大連盟

「無数の川が流れ込む海のように大きな器となる」という意味の「海納百川」と銘打たれたこの記者会見で、シャオミは10億ドル投資の結果、100社以上の動画配信サイトと「百川」動画配信サイト大連盟を結成したことを発表した。

大連盟参加各社を合わせた市場シェアは目下85%を超えており、映画、ドラマ、バラエティ、アニメなど各ジャンルのコンテンツ数は、いずれもライバル企業を上回るという。

シャオミは昨年、18億人民元(約360億円)を投じ、大手動画配信サイトの「愛奇芸 iQiyi」と「優酷土豆 Yoku」の一部株式を取得して、戦略協力パートナーシップを結んだ。

またドラマ制作を手がけるコンテンツ企業「華策影視」にも株式参入しており、シャオミ・テレビとセットトップボックスの累計販売台数も677万台に達し、「テレビ+スマートデバイス+コンテンツ」という布陣ができあがった。

人気映画監督も会見出席。映画、スポーツ、音楽ライブもカバー

コンテンツ事業に賭けるシャオミの野心はそこにとどまらない。「シャオミ自身がコンテンツをつくることはない。だからこそ、多くのコンテンツ企業と提携することができる」と雷CEOは語る。

提携企業を拡大する戦略は、ハードウェアのエコチェーン思想とも一致する。記者会見には映画会社「博納影業 Bona Film Group(ボナ・フィルム)」の于冬・総裁や有名映画監督の馮小剛氏も記者会見に出席し、制作面からもそのコンテンツ産業との協力の提携を進める決意を見せた。

映画産業とネット動画配信の提携には多くの余地が残されている。ボナ・フィルムの于総裁は、ネットテレビで映画の予告編を流す、映画と同タイミングでの有料ストリーミングなどの可能性について検討していると述べた。

シャオミはさらに、オリジナルコンテンツも強化していく予定だという。

香港のテレビ局「フェニックステレビ」のニュースチャンネルとの提携による動画ニュース配信や、PPTVやマンゴーTVとの提携によるスポーツ・ライブ中継、そしてマンゴーテレビとの提携によるコンサートのライブ中継などが予定されている。

6月下旬にはサッカー中国スーパーリーグ、野外音楽フェス「草苺音楽節」の長沙会場ライブ、8月にはサッカーのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)がシャオミ・テレビで生中継されることになっている。

新型シャオミ・ルーターがデバイスとコンテンツをつなぐ

コンテンツ戦略が明確化する中、長らくポジションを見失っていたシャオミ・ルーターもその立ち位置を見つけた。それはすなわち、デバイスとコンテンツの架け橋という位置づけだ。
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10日発表された新型シャオミ・ルーターには、6TBのハードディスク(廉価版は1TB)が搭載されている。その特長は2つ、遠隔動画ダウンロードと写真バックアップだ。

遠隔動画ダウンロードは、高画質動画をストリーミング視聴すると止まってしまう問題に対応した。シャオミのスマートフォン、あるいは別メーカーのスマホにインストールされたシャオミ・ルーター・アプリを使えば、どこからでも自宅のシャオミ・ルーターにダウンロードを指示できる。帰宅すれば、ダウンロード済みの動画をシャオミ・テレビですぐに見ることができるというわけだ。

もう1つの実用的機能が写真バックアップだ。USBケーブルでデジタルカメラとルーターをつなくだけで、自動的に写真がバックアップされる。スマホのアプリを使えば、ルーターのハードディスクに保存されたファイルの閲覧が可能となる。この遠隔ドキュメント管理機能によって、シャオミ・ルーターはホームサーバー化する。

新型ルーターにはハードディスクを搭載

新型シャオミ・ルーターは、手に取ると一般のルーターよりも明らかに重い。

ブロードコム製の1.4GHZデュアルコアCPU「4709C」、512MBのフラッシュメモリ、256MBのRAMを搭載している。外付け型の2×2 デュアルチャンネル PCBアンテナ、3.5インチのAV-GPハードディスク(動画用途向け)が採用された。

512MBのフラッシュメモリを積んだハードディスクは、最大で6TBまで拡張できる。ユーザーは自分でアップグレードしたり、ハードディスクを交換したりすることが可能だ。1TBの標準版は699元(約1万4000円)、6TB版は2999元(約6万円)という価格で6月18日からシャオミのネットストアで販売される。

また、Wi-Fiシグナル拡大機も新たに発表される。大型のUSBメモリのような外見をした製品だが、一度シャオミ・ルーターに差し込んでペアリングすれば、後は必要な場所に置いてUSB経由で通電させるだけでルーターの信号をキャッチし増幅させる機能を持つ。

デバイスからコンテンツまでのクローズド・サイクルを完成

シャオミは以前から、製品以上に商業的手法で成功を収めてきた。提携企業でつくるエコチェーン製品からシャオミ製品の販売窓口となっているネットストアまでをつくり上げ、絶えず資金が流れ込む垂直統合型EC企業に成長した。

中国の映画・テレビ産業の急成長を考えれば、スマホやテレビなどのデバイスを活用するシャオミ型コンテンツ業務は、新たな金鉱になるはずだ。

今回の発表会に使われた「海納百川」というタイトルの本当の意味は、「海量」(「海のように膨大」という意味)な数のデバイスを入り口に、コンテンツ投資や動画配信サイト連盟を通じて最新、多数のコンテンツを「納める」ということだ。スマホ、ルーター、テレビという3つのデバイスでシームレスなコンテンツ消費体験をつくり出す。

コンテンツ分野での取り組みを通じて、シャオミは初めてデバイス、IoT、コンテンツという3大核心業務の融合に成功した。

次々と更新される、スマホ、テレビ、セットトップボックスのデバイス出荷台数は、シャオミを名実ともにコンテンツ発信プラットフォームへと変え、コンテンツ分野での提携に強い発言権を持たせるに至った。

そして最新にして最もそろったコンテンツ、より良好な視聴体験はユーザーのシャオミ・テレビ、シャオミ・ルーターへのニーズを高めるものとなるはずだ。

注意すべきは、シャオミの3大核心製品がいずれもハイエンド路線へ向けて舵を切っていることだ。これはつまり、ユーザーのコンテンツ消費体験は、ある程度保証されるということでもある。

こうしてシャオミはデバイスからコンテンツに至るまで、完璧なクローズド・サイクルをつくり上げることに成功した。ライバルとの距離を、また一歩広げたわけだ。

(執筆:韓雨/ifanr.com、翻訳:高口康太)

*本連載は毎週火曜日に掲載予定です。

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