【現地発】逆風のマクロン大統領が賭けに出た「3つの理由」
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マクロン大統領は、岩盤支持層の票が逃げてしまうことをビビッて日本の政治首脳ではとてもできないような、だけど、政治・経済的には絶対に必要な改革を断行しようと試みてきたところは私は評価に値すると思っています。
やっていることは正しい。でも、エリートゆえなのか、空気を読めない発言をして怒りを買う、庶民の気持ちを逆なでするような余計な一言を発してしまう、だから黄色いベスト運動や農業従事者たちのトラクター道路占拠のような現代版「一向一揆」を招いてしまう。フランス在住フランス人の友人たちの声をまとめると、ざっとこんな感じです。
メディアは、定期的に大きな賭けに出るマクロンさんのことを「ギャンブラー」「リスクテイカー」と書き立て、今回の解散&選挙のガラガラポン祭りの決断もこれまでで最も大きなギャンブルと評しています。
ただ、政治ド素人の私から見ると、マクロンさんって少年の頃に憧れた同級生の友達のママに一目惚れして略奪婚、その後も夫人にラブラブ、純愛を貫いているところからしても何事にも非常にピュアな人なんじゃないか。
政治的なドロドロした駆け引きなんかには興味がなく、正しいと思ったことを脇目もふらずやりきりたい人なのではないか。今回の議会解散を側近のアタル首相に告げたのも公表直前だったようです。
ちなみに、私はマクロンさんことを結構気に入っていまして、私の中では彼はファッションアイコンでもあります。彼のトレードマーク“ネイビーカラーのスーツ”は「マクロンブルー」と言われていて、私もパリへ行ったときにマクロンさん御用達のスーツ屋さんでマクロンブルーのスーツをつくってきました。これがめちゃ庶民的な価格でコスパも最高です。どの政党が「極右」であるのかは、今と50年前では違います。
なお、ヨーロッパでもメディアなどで「極右」と名指しされる政党はありますが、自分で「極右」と名乗っている政党はありません。多くは自分たちでは「保守」とか場合によっては「中道」と名乗っています。
また、これらの「極右」政党は、「ポピュリスト」と呼ばれる場合も多いです。
現在の「極右」の特徴は、まさに反(イスラーム)移民であることと、親ロシアであることです。
50年前なら、第2次世界大戦や植民地支配の歴史的評価が「極右」の最大の関心事項でした。
マリーヌ・ルペン氏の父親、ジャン・マリー・ルペン氏もアルジェリア独立戦争を鎮圧するためにフランス軍に志願し、その時の戦友たちが彼の政治運動の最大のバックボーンでした。
マリーヌ・ルペン氏は、アルジェリア独立戦争とか、全く話題にしません。
こういうのは日本のいわゆるネット右翼にもいえることで、関心事は第2次世界大戦よりも移民や中国でしょう。
「アジア解放のため」とか全く関心がないし、少し言っていたとしても、アジアの貧困を解決するために何かしたりはしないし、日本政府が国際協力をすると反対します。
マリーヌ・ルペン氏が強調するのは、(イスラーム)移民の追放とウクライナ支援の中止、そして反エリートと労働者階級の所得向上です。
移民といっても、ウクライナ人移民はいい、ユダヤ人もいい、イスラームはダメだ、というものです。反ユダヤ主義とかは全くいいません。むしろ親イスラエルです(反イスラームなので)。
反エリート、というのは、金融業や投資家が儲けすぎているのがおかしい、という主張で、税制と保護主義で労働者の所得を上げる、というのが公約です。
つまり、トランプ派共和党とかなり似ています。
来月の国民議会選挙に向けて、左派の社会党、共産党、環境派、メランション派などは「新人民戦線」の結成を宣言し、選挙協力を行います。
右派の一部は、国民連合と組もうという動きもありますが、分裂しています。国民連合は、マリーヌ・ルペン氏に替わって2022年から党首になっているバルデラ氏が非常に人気があり、第1党は確実に取れそうです。
マクロン派は埋没しています。極右というと民族主義的な印象ですが、最近の躍進は「人々の価値観ではなく、優先順位が変わったから」と政治学者のアンジェリ博士は分析します。
超訳すると「非正規移民への福祉、ウクライナ支援、環境政策はいいことだけど、そのせいで生活が苦しい。自分たちだけを優先して欲しい」ということです。
今回の記事では、欧州議会選挙での「極右の躍進」やマクロン大統領が解散・総選挙についてレポートします。