『女性版骨太の方針2024』で変わる、女性の健康と働き方
2024年5月31日、日本政府は「女性活躍・男女共同参画の重点方針2024」(女性版骨太の方針2024)(原案)を提示した。女性の就業継続と健康支援に重点が置かれ、企業や自治体における取組を後押しする内容となっている。
経済・労働、教育、健康、政治参加といった領域における具体策を通じて、女性がより一層活躍できる社会を構築することが目的である。本記事では、特に「女性の健康課題」に焦点を絞り、この方針の内容や期待される効果について詳しく解説する。
1.女性活躍推進法の改正
令和7年度末に期限を迎える女性活躍推進法について、令和7年通常国会に改正法案を提出することを目指している。事業主が女性従業員に対し、女性特有の健康課題に取り組むことや、より正確な情報公表の促進など、更なる女性活躍推進に向けた見直しが行われる。
昨年と比較し、女性の健康課題への取り組みがさらに強調されており、政府が女性の健康課題に注目していることが伺える。
2.健康診断の充実等による女性の業務継続支援
従業員の月経随伴症状や更年期障害の早期発見に向け、一般定期健康診断での早期発見に役立つ問診項目の拡充を促進する。さらに、自治体の骨粗鬆症検診の受診率向上に向けた取組も進める。
事業所内で働く女性の健康相談に対応する担当者の配置や、特別休暇制度の導入支援など、事業主による従業員支援を後押しする。
さらに、従業員の産婦人科受診を後押しする相談事業の促進や、女性特有の健康課題に取り組む企業を評価する仕組みも検討する。
昨年と比較し、更年期障害や骨粗鬆症の受診率向上など、より中高年の女性に向けた対策が強く打ち出されている。
3.企業評価の更なる充実と普及
健康経営銘柄、健康経営優良法人、なでしこ銘柄など、女性の健康課題に対して積極的に取り組む企業の好事例を集め、広く認知する。
さらに、小規模事業者においても、こうした取組が広まるように、健康経営優良法人制度中小規模法人部門要件緩和等を検討する。
企業の経営層は、今まで以上に健康経営の重要性を理解し、企業戦略に組み込むことや、健康診断データの分析・活用などに力を入れていく必要がありそうだ。
4.フェムテックの推進と更なる利活用等
フェムテック製品の研究開発では、フェムテック事業者が医療機関などと連携し、AMED(日本医療研究開発機構)や補助金を活用しながら、ニーズ把握やデータ収集、実証実験に取り組むことを支援する。
企業における製品開発に性差の視点を取り入れる「ジェンダード・イノベーション」の促進や、製薬業界による女性特有の健康課題への配慮を求める。承認審査でも、女性への影響に着目するよう留意する。
フェムテック分野においては、これまで以上に、大学や研究機関と連携し、フェムテックに関する基礎研究や応用研究を推進する動きが出てきそうだ。
筆者も、大学と議論をしていると、技術はあるが「どう実装していくか」に課題を抱えている大学も多くあると感じている。大学とスタートアップとの、技術と課題のマッチングが求められている。
5.性差に応じた総合的な健康支援
女性の生涯を通じた健康課題に関する基盤データ収集や、医薬品・医療機器の研究開発推進などを行う。さらに、個人情報に配慮した上でデータベースを構築し研究に活用する。
医療従事者に対し、女性の健康課題への理解を促す研修を行う。医学教育でも性差を考慮した教育の充実を図る。
若年層に妊娠・出産の知識を得る機会を追加するなど、ライフステージに応じた支援を行う。女性の健康増進は、関係省が総合的な取り組みを推進する方針である。
6.まとめ
「女性活躍・男女共同参画の重点方針2024」の中でも、女性の健康課題にフォーカスをあてたが、それを踏まえ、企業および個人の立場で何を意識すべきだろうか。
今年の方針では、企業が女性特有の健康課題に取り組むことがより強調されている。特に更年期症状などの問題に対して、企業は具体的な支援策を導入することが求められる。
これは健康経営の一環として、従業員の健康を支援し、生産性の向上にも寄与する。経済産業省の調査では、更年期症状や婦人科がんといった女性特有の健康課題による社会全体の経済損失が年3.4兆円程度に上ると試算されており、注目すべきポイントである。
7.【お知らせ】7/17(水)みんなで語るフェムテック@渋谷SOIL
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女性中心で語られることの多いフェムテックですが、実は男性(メンズ)も多く関わっていることをご存知だろうか?
今回のイベントでは、フェムテック事業やその企画に関わる男性メンバーのパネルディスカッションを起点として、フェムテックの可能性と課題を、ジェンダーや取り組むきっかけ等の違いによる観点を通じて、ワークショップ形式で議論します。
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【議論のテーマ(一部)】
・男女それぞれの視点から見たフェムテックの難しさやチャレンジ
・フェムテック事業立ち上げの課題あるある
・分野特有の難しさと課題を乗り越えるため対策・アイデア
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・トップ画像:女性版骨太の方針2024(原案)をもとに筆者が作成
・参考資料:女性版骨太の方針2024(原案) https://www.gender.go.jp/kaigi/danjo_kaigi/siryo/pdf/ka72-1.pdf
コメント
注目のコメント
女性の健康増進と就業継続が大きな柱となった、今年の「女性版骨太の方針2024」ですが、企業や自治体、そして国や医療機関などが連携し、女性の健康課題に総合的に取り組むことを目指しています。
女性の健康課題で特に注目すべき点をまとめました。
記事にて、詳細の解説をしています。
1.健康診断の充実と女性特有の健康課題への対応
月経や更年期障害などの早期発見に向けた健康診断の拡充を企業に促すほか、従業員への相談体制の整備や特別休暇の導入支援、産婦人科受診を後押しする取り組みなどを進める。
2.企業の健康経営の促進
健康経営銘柄など、女性の健康課題に積極的に取り組む企業の好事例を収集・発信。中小企業の取り組みを促進するため、健康経営優良企業の要件を検討
3.フェムテックの推進と更なる利活用
フェムテック製品の研究開発において、企業や製薬業界に女性特有の健康課題への配慮を求める。個人情報に配慮しつつフェムテックのデータを研究に活用する仕組みを構築する
4.性差に応じた健康支援の総合対策
女性の生涯を通じた健康課題に関する基盤データの収集や、医薬品・医療機器の研究開発を進める。若年層への妊娠・出産の知識普及、医療従事者への研修なども行う。
5.女性の健康ナショナルセンター(仮称)
同センターの診療機能を強化するとともに、女性の健康に関する研究の中核的役割を担う。関係省庁が連携し、総合的な健康対策を推進する。岸田政権は、何かと政策を打ち出すが、その実は、結実して欲しいものだ。
ようやく、働き辛い女性たちに目がいくようになった。しかし、不十分だ。経営者、そして彼女たちを囲む環境は旧態依然のままが多いからだ。
踏み出す事で、少しでもより良い環境に変わるキッカケになって欲しい。