進撃の中国IT

ネットマーケティングの遅れから転換迫られるスマホ成長戦略

中国レノボ、モバイル不振で突如の事業トップ交代

2015/6/9
6月1日深夜、レノボ(聯想集団)が役員人事を発表した。レノボ副総裁兼中国エリア総裁であり、レノボのモバイル子会社「Fancy Maker」のCEOでもある陳旭東氏が、劉軍総裁に代わり、レノボのモバイル事業を率いることになった。この突然の発表に、業界には驚きと詮索が走っている。

ネットマーケティングに乗り遅れた劉軍氏の采配

5月28日、劉軍氏は、「Lenovo Tech World 2015」の会場に出席した。

モバイル事業グループ総裁兼モトローラ管理委員会議長として、スマートフォン事業におけるイノベーションについてプレゼンするとともに、人気女優のファン・ビンビン(范冰冰)を連れてステージ上がり、モトローラ製のカスタマイズ可能なスマホのカスタムメイドサービスを宣伝していた。

結局、この日がモバイル事業グループ責任者としての最後の日となった。

レノボ社内では、昨年のモバイル事業での業績不振もあり、劉氏がモバイル事業からはずされ、米国事業に異動になるといううわさが流れていた。

だが、結果はこのうわさ通りにいかず、劉氏は特別顧問のポストに回された。レノボのプレスリリースでは、「劉軍氏は『ひとまず』モバイル事業と企業戦略を担当するグループCEO特別顧問に就任する」と、慎重な言い回しがなされている。

あるレノボ社員は言う。「今回の人事は、劉氏がスマホ事業の業績悪化の責任を取った格好だ。レノボのモバイル事業はネットマーケティングへの布陣があまりにも遅すぎた」

レノボの2014年度業績リポートによると、買収したモトローラの半期実績を合算したスマホの売上は、全世界において前年同期比で50%以上増加し、合計7600万台に達した。

Lenovo launches lighter, quicker ThinkPad laptop

劉軍氏に代わり、新たにレノボのモバイル部門責任者に就任した陳旭東氏(imaginechina/アフロ)

また、モトローラ製品を含む海外市場での売上総額が、全世界での売上総額の41%を占めたことから、レノボは、世界3位のスマホメーカーに躍進している。業界の試算でも、レノボ製スマホの世界シェアは、前年同期比で1ポイントの上昇をキープし、5.7%となっている。

「売れてはいるが、儲からない」モバイル

だが、表向き好調に見える業績の傍ら、2014年度の中間決算においてモトローラの実績を計上する前のレノボのモバイル事業は、「売れてはいるが、儲からない」という苦境に陥っていた。

財務諸表によると、2014年度中間決算の際、レノボ製のグローバルモデル販売台数のうち、スマホは前年同期比で38%増の3280万台、タブレットPCは前年同期比で44%増の540万台だった。

ところが、モバイル事業全体の販売収入は前年同期比で11%の伸びにとどまっている。またレノボの全世界における販売収入は208億7000万ドルに達したが、そのうちモバイル事業が占める割合はわずか14.28%の29億8000万ドルだった。

今年に入っても、レノボのモバイル事業は、販売増の勢いをモノにできずにいる。

市場調査機関「IDC」の中国スマホ市場リポートによると、2015年第1四半期におけるレノボ製スマホの出荷台数は820万台と、昨年同時期の1050万台より22%減少した。

市場シェアも、2014年第1四半期の10.2%から現在の8.3%にまで落ち込み、アップル、シャオミ(小米科技)、ファーウェイ(華為技術)、サムスンの後塵(こうじん)を拝し、5位の座に甘んじている。

つまり、劉軍氏が2012年下期に策定した目標──「レノボのスマホ事業は、1〜2年以内に中国トップとなる」という目標は、次第に遠いものになりつつある。

モトローラ買収で売上は増大、しかし利益はわずか1%増

携帯電話市場が波乱を迎えた2014年、劉氏の尽力によって成功したモトローラの買収は、レノボのモバイル事業に画期的な収益をもたらした。だが、レノボの利益率もその影響を受けた。

レノボの楊元慶CEOは、2014年の財務諸表を前に、それについて率直にこう述べている。

「2014年10月の買収完了後、モトローラの利益率は改善を続けているが、レノボのモバイル事業には以前からの3億7000万ドルの欠損をひきずっている。第4四半期においてモトローラ製品の販売台数は780万台を突破したものの、第3四半期の1000万台からは若干の減少となった。総合的に見れば、2014年度の純利益は8億2900万ドルにとどまり、前年同期比で1%上昇したにすぎない。一方で2013年度の純利益は総額8億1700万ドルと、前年同期比で28.7%の伸びだった」

レノボのモバイル事業は、インターネットの抱き込みにも後れを取っていた。

2014年後半、ライバルであるファーウェイの「honor」(栄耀)、クールパッド(酷派集団)の「dazen」(大神)などのスマホブランドが市場を席巻した。

その頃、レノボはようやく、スマホなどの端末製品をネット販売する新会社の設立に発表をこぎつけた。

そして2015年の4月1日になって、レノボの出資によるネット企業、Fancy Makerがやっと発足。CEOに就任したレノボの陳旭東・副総裁は、ここでモバイルネットとIoT(モノのインターネット)分野での事業に注力することになった。

5月28日の「Lenovo Tech World 2015」で、Fancy Makerがスマホブランド「ZUK」を発表し、そのオフィシャル通販サイト「ZUK.com」も正式にオープンした。

PC事業からスマホ事業へ異動する陳旭東氏とは

2015年度、レノボのモバイル事業の目標は、「スマホ(モトローラ製品を含む)とタブレットの販売で1億2000万台を達成すること」と「利益率の向上」だった。劉軍氏の後任として、陳氏が選ばれた事情もここにある。

あるレノボ社員はこう分析する。

「陳旭東氏はPC事業で素晴らしい実績を残しているし、担当である中国エリアの業績も好調だ。今回の抜てきは、レノボ製スマホの中国市場での業績アップが前提にある。また、インターネットとの相性が良い陳旭東なら、ネット需要重視という転換という今のレノボのニーズともぴったり合うからだ」

今回の役員人事発表では、47歳の陳旭東氏が、中国エリアで築いてきた実績が強調されている。1993年入社の陳氏は、中国エリアの総裁を務めた5年間に、レノボ製PCの中国でのシェアを26%から36%に引き上げ、利益を倍増させた。

また、レノボ中国の先頭に立ち、インターネット事業モデルの転換を進めてきた。

陳旭東氏がモバイル事業グループの総裁に就任した後は、Fancy Makerの常程・副総裁が同社CEOを引き継ぎ、陳旭東は賀志強・レノボ副総裁とともに、Fancy Makerの共同取締役会長の地位に就く。

ネット販売シフトへ、だがモバイル市場への適応力に疑問の声も

レノボ社員の多くは、これまでのレノボのモバイル事業を「売上台数を優先し、品質を追求してこなかった。収入を重視して、ブランディングを軽視していた」と感じている。

2011年ごろ、通信キャリアの販売チャネルを通じて急速に勢力を拡大したレノボの携帯電話は、その後もこの販売スタイルに依存し続けた。

そして、インターネットマーケティングのうねりが携帯電話業界をのみ込んだとき、ネット販売で実績をつくろうとせず、出荷台数を吹聴しつつ大量の機種を投入するという時代遅れの戦術をとり続けた。

その結果、ユーザーの評価を得ることができなかった。

今回の人事異動は、劉軍時代の終わりを意味している。後継者である陳旭東氏はすでにインターネットへの方向転換に着手しており、イノベーションと品質を重視する思考の持ち主だ。

しかし、彼のモバイル市場での経験不足、ライバル他社と比較して、その市場への理解と適性について懸念する声もある。

役員人事プラン発表から一夜明けた2日、レノボの株価は急落を続けた。

(執筆:覃敏/財新網、翻訳:湯沢尚美)

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