2024/5/23
【超冷静】「脱炭素」でも稼ぐ、三菱商事がしたたか過ぎた
「脱炭素」という言葉から何を思い浮かべるだろうか?
再エネ、EV、カーボンニュートラル──。いろんな言葉はあるが、一つ確かなのは、まずCO2を大量に排出する化石燃料への依存を減らしていくということだ。
だが、化石燃料のなかでも、実は序列がある。
例えば、最もCO2を排出する石炭は発電向けで世界的に廃止が進む一方で、相対的に排出量が少ないことで知られる天然ガスは、実のところ、今後の需要の見通しが真っ二つに分かれている。
例えば、液化天然ガス(LNG)のニーズを見てみよう。
現在の需要は4億トンだ。
だが、2040年の見通しは、英石油メジャーのシェルが5~8割増えると予測する一方、国際エネルギー機関(IEA)の場合は、むしろ25%~50%減少するはずとほぼ真逆の見通しを発表している。
これは、一体何を意味するのだろうか。
もちろん世界は「脱炭素」の方向でおおまかには一致している。それでも、エネルギーの地政学に市況、各国の政治、電池や再エネのイノベーション、市民運動まで、ありとあらゆる力学が働くこの領域は、5年先さえ見通すのさえ難しいということだ。
そして、企業はその不透明性のなかで「稼ぎ」を最大化しないといけない。
三菱商事は、1960年代に天然ガスをLNG化して輸送する手法を導入して以来、特に天然ガスでは大きな利益を生み出してきた一方で、現在は「EX」と名打ってエネルギー転換にもコミットしている。
彼らは、次なるエネルギービジネスをどう見ているのか──。
三菱商事でエネルギー部門を統括する地球環境エネルギーグループの齊藤勝CEOを直撃すると、その冷静かつ強かな戦略が見えてきた。
INDEX
- 2022年、景色が変わった
- 稼ぎ頭の「寿命」はいつか
- 脱炭素に「全張り」だが、実は…
- 商社は最強の「情報通」である
2022年、景色が変わった
LNGを巡る景色は、2022年に一変した。