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2022年3月7日 公開

【必須知識】戦争史から、ウクライナの今を理解する

「ウクライナ侵攻は世界の秩序を根本から変える」。多くの専門家がそう話します。それってどういうことなのでしょう。「戦争」は世の中をどう変えてきたのでしょう。この悲惨な戦いが持つ歴史的な意味を理解するために、この100年あまりの戦争と覇権の移り変わりを10分強で分かりやすく解説します。(14分/出演:キアラシ ダナ/声の出演:柳橋泉紀/デザイン:國弘朋佳、黒田早希/撮影:小田切瑞穂、川村拓希/アシスタント:王芸杉/キャラクターアニメ:伊藤大地/編集・音効:栗原良介/ディレクター:小西健太郎/プロデューサー:森川潤)
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近代戦争は、フランス革命によって本格化しました。民主制と義務教育、そして国民皆兵の導入です。史上初めて国民の軍隊を持ったナポレオンは、ヨーロッパ大陸を席巻しました。
 明治維新後の日本を含めこの体制をつくれた国と、現代までできていない国があります。第1次世界大戦も第2次世界大戦も、国民皆兵を確立できた国同士の戦争でした。これは、短い期間でも膨大な死者が出ます。今のロシアとウクライナの戦争もそうです。
 国民皆兵の近代国家が圧倒的に強い、と思われていた20世紀、遊撃戦論が登場します。毛沢東によって提唱され、中国共産党の勝利や、ベトナム戦争によって、民衆のゲリラ戦が近代国家の軍隊を翻弄して消耗させ、勝利できることを実証しました。
 ゲリラ戦はアジア、アフリカ、中南米、そしてアフガニスタンやチェチェンなどにも普及していき、ソ連(ロシア)に大打撃を与えました。この延長上に、21世紀に入ってからの、「テロとの戦い」があり、米国はベトナムでの誤りを繰り返さないために深入りせず、昨年アフガニスタンから撤退しました。
 こういうゲリラ戦は、今後も起きるかもしれませんが、近代国家同士の戦争は、もはやそう簡単には起きないのではないかと思われていました。犠牲者があまりにも多くなるのが、わかりきっているからです。兵器の破壊力は、第2次世界大戦の頃よりもはるかに強力になっています。
 今、ロシアとウクライナがやっている戦争は、第2次世界大戦とそう種類の変わらない戦争です。そういう古い戦争をやっている、というところに、世界中の多くの人々は戸惑っています。
 ウクライナ側が、組織的戦争指導ができなくなれば、ゲリラ戦に移行していくかもしれませんが、それも、ベトナムやアフガニスタンで何十年も前にやったことです。
 ロシア政府はずいぶん「新しい戦争」を提唱してきたのですが、何かテクノロジーを駆使した画期的な戦術で圧倒的に迅速な勝利を収めるのかと思ったら、20世紀と変わりません。米国のイラク戦争あたりと比べても、明らかに古い戦争です。
 結局、グローバル化しているのは政治と経済であり、経済制裁の効果が極めて迅速に、絶大に発揮されるようになった、という点は、20世紀とは大きく変わっています。ロシアは古い戦争をやって、現代の経済の敗者になろうとしています。
今回のウクライナでの戦争で、改めて注目されている言葉があります。
それは「ナラティブ」という言葉です。

一般に”(心情的な側面を持つ)物語”、のような文脈で使われますが、戦争の世界では「大衆の共感を掻き立てる(戦争目的の)物語”を言います。
そしてより優れたナラティブを作り上げることが、時に戦争の勝敗を分けることになります。

例えばこの動画にもありますが、国民国家がなぜ強いのかといえば、何百万、何千万の士気の高い兵士を無尽蔵に動員できるからです。
なぜそんなことが可能かといえば”自分達の国を自分で守る”という強烈なナラティブが全国国民に共有されているからに他なりません。

この国民国家という概念はフランス革命が生み出したもので、それまでの欧州の歴史を塗り替えた、画期的なナラティブでした。
ヨーロッパの王家が皆親戚なのはご存知かと思いますが、それは逆に言えばヨーロッパのどの国でもフランク王国に端を発する少数のゲルマン系の支配層が、その他の、特にローマ以来圧倒的多数のラテン系住民を支配してきた歴史だということもできます。

つまりフランス革命で確立されたのは、ゲルマン系王族支配を覆し、圧倒的多数の国民が自分達の国を始めて持ったのだという”ナラティブ”であり、その物語に熱狂して次々と建てられたのが国民国家という最強のナラティブを共有する国家群なのです。

因みにその歴史が本当なのかどうかは問題ではありません。
そのナラティブにどれだけ多くの人が共感するかどうかです。

さて、その意味では今回のウクライナとロシアには異なるナラティブがありました。
今回の戦争におけるウクライナのナラティブは”ウクライナは独立した国家であり、国民はそれを守るために戦う”です。
逆にロシアのナラティブは”ルーシは民族的に兄弟であり、一つに統合されねばならない”です。

戦争の歴史はナラティブの歴史です。
その範疇においては国民主権も帝国主義も共産主義による世界同時革命も、なんなら大東亜共栄圏やマニフェストディスティニーもシオニズムも全部一つのナラティブです。

もちろん戦争の勝敗には個々の人物の能力、戦略、戦術、兵力など様々な要素が影響しますが、大きな流れの中ではより強力なナラティブを持つ方が勝利を収める可能性が高くなります。

それが人類の戦争の歴史なのだといえるかもしれません。
今回、西側諸国は最初から軍事力でロシアを止めるつもりはありませんでした。その代わりに経済制裁を事前に通告していましたが、プーチンを止めることはできませんでした。

今回はあえて足元の侵略戦争から一歩離れて俯瞰し、今起きていることが長い歴史の中ではどんな意味を持っているのか、動画で解説します。

今一番必要なのはもちろん、プーチンを止めること。そして中長期でこの侵攻を失敗に終わらせることです。継続的、包括的にロシア経済を包囲してプーチンが心から「ウクライナに侵攻しないほうが得だった」と思うように仕向けないといけません。もしも本当にロシアがこの戦いに「勝つ」事があると、世界の秩序は取り返しがつかないくらい、崩壊してしまうでしょう。
「もし侵略が勝利すれば、全世界は新しい戦争の時代に飲み込まれ、私たちが生きている間に終わりを見ることはできないかもしれない。私たちの未来は、ウクライナの人々の勇気にかかっているのです。彼らを支援することは、私たちの義務です」

『サピエンス全史』でも知られる歴史家のユヴァル・ノア・ハラリは最近各国のメディアに登場して、こう訴えかけています。すでに人類の歴史が一つギリギリの瀬戸際を迎えている、のだと。

本日から5日間お送りする特集では、戦争、エネルギー、ロシアの地政学、さらには核まで、今リアルタイムで動いている「歴史」をお伝えすることで、ウクライナの今を理解し、さらには未来につなげられるようにしたいと思っています。

まずは、キアラシ記者による「戦争と覇権」の歴史解説からです。この戦争史を通じて、ウクライナの今を理解することは、世界の秩序の行方を捉える上でも重要になると痛感しています。
核弾頭の数の多さが、強さの象徴になる。現在は、米国より多く保有しているロシアが最強となります。誰もロシアに戦争を仕掛けたくない。それを見越してのプーチン。平和の秩序にはお構いなく、世界の反戦の声も聞かぬふり。軍事侵攻の手綱をゆるめません。

このまま放っておくと、隣接国へ次々と戦争を仕掛け、領土を増やしていくことでしょう。核兵器に対抗する術は、経済制裁しかないのでしょうか。

歴史を紐解くと、力で領土を手に入れたところは、統治がうまくいかず、撤退しています。民への慈しみがあってこその統治。それをプーチンは忘れている。
どうみてもロシアは敗北しつつある。長期戦をやる兵站も士気もない。経済制裁の影響はこれからさらに深刻になり、国民の不満は高まる。

NATOの早期警戒管制機や衛星からのデータでロシア軍の動きは逐次ウクライナに伝えられてる。西側の支援でウクライナ側の兵站は無尽蔵。士気も高い。

一方モスクワに残しているロシア軍主力を動かすとクーデターのリスクが高まる。

短期決戦で勝負をつける当初の目論見が外れた。今はどう考えても詰んできてる。

プーチンはエグジット戦略をどう考えてるんだろう?? まともに思考できてるのか、暴発して核を使ってしまうのか。

最悪の結果にならないために、この辺がプーチンの面子を立てつつ停戦するタイミング。まあこれもプーチンにまともな情報が伝わってて、まともに思考ができているという前提ではあるけど… イスラエルのベネット首相に期待したい
「歴史は繰り返す」とよく言われますが、正確には「全く同じ歴史は繰り返されないが、歴史の構造は繰り返される」だと思います。

現在のパクス・アメリカーナの終焉は、その語源となった古代ローマの紀元前27年から200年余り続いたローマの平和(パクス・ローマーナ)の終焉と構造が似てるように感じます。

まず一つ目が「寛容さの喪失」。古代から大帝国を築き上げた国家は遍く寛容性を持っています。ローマは属州ごとに分割統治を行い各州の主体性を重んじていました。古代中東一帯を支配したアケメネス朝ペルシャ、中世イスラム世界を支配したアッバース朝も同様に他民族や州の自主性を重んじていました。

しかし、ローマはゲルマン民族の大移動による多文化への嫌悪感や、一神教のキリスト教の布教(ローマ土着の宗教は多神教)により寛容性を失っていきます。

これはアメリカが「世界の警察」として国際社会を良くするために奉仕するという利他的行動から、「アメリカファースト」という利己的行動に戦略行動が変化し、他国への寛容性を失いつつある現状と重なります。

二つ目は、「市民の主体性」が失われる事。古代アテネも同じくですが、安寧を築いていた国の没落時は格差の拡大による市民の分断、主体性の喪失があげられます。現代の民主主義の基礎を築き、理想の民主主義を実現していた古代アテネも、格差の拡大の後に現代で言うポピュリスト(デマーゴーグ)が出現し、衆愚政治に陥って国力を大きく削がれてしまいます。

このように、構造的には古代と現代でさえもかなり似ている風に思います。

古代ローマは、パクスローマーナ以後、各地で反乱や軍事政権が起こる軍人皇帝時代を経て、専制君主制と言われる皇帝の力が非常に大きい体制が採用され、滅亡までの間一定の安定性をもたらしました。

この10年あまり、世界の各地で絶えず内戦や軍事衝突といった小競り合いが起きています。今回のウクライナ・ロシア戦争はグローバル社会の分断と亀裂が顕在化したものでしょう。
古代ローマの歴史と同じ構造で推移するなら、中国やロシアといったリーダーの力が圧倒的に近い強権体制の国が今後力を持つことを示唆しているのかもしれません。

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