激論Jリーグ・第1回
近い将来、Jリーグは大爆発する
2014/12/18
これまでJリーグは日本人オーナーおよび企業がクラブの株式の51%以上を持つことを義務づけていた。いわゆる外資の禁止だ。だが、リクルート出身の村井満チェアマンの働きかけによって、来季以降、それが解禁されることが濃厚になっている。外資解禁によって、Jリーグはどう変化するのか。3回にわたって、金子達仁の「Jリーグ論」をお届けする。
シーズン最後に見せたJリーグの底力
──いよいよJリーグで外資の参入が解禁されそうです。これまでは外国人オーナーおよび企業がクラブの株式を51%以上持つことはできなかったんですが、報道によれば来季以降に実質的に解禁されることが濃厚になってきました。日本法人をつくればOKだと。
「Jリーグのファンには言うまでもないけれど、シーズン最後の数試合はものすごい試合をやっていたよね。残念ながらまだJリーグの経営規模はそれほど大きくないけれど、これだけの試合をやって、これだけのお客さんを集めている。で、いよいよ外資が入ってくる。だから、こう断言できる」
──何ですか?
「Jリーグは大爆発するから」
──そんな予感が?
「する。2ステージ制というのがちょっと痛いんだけど、お金が入ってくるようになったら、ここまでお金がない状態でやっていて耐えていたものが一気に花開く。Jリーグは今、第二の開幕前夜にさしかかって来たなあという感じがする」
──1993年の創成期の雰囲気を思い出すわけですか。
「あの頃、日本人はまだサッカーを知らなかったじゃない? そこを広告代理店の力技で盛り上げた部分があった。いい意味で客寄せパンダをうまく使ってね。今の日本に客寄せパンダが来たら、大変なことになると思わない?」
──日本全国にプロクラブができ始めて、サッカー人気は確実に高まっていますもんね。
「まったくのガセだったけど、スポーツ新聞で『FC東京がシャビを獲得へ』って報じられたよね。こういう噂って、縮む一方のJリーグではすごく大事なこと。結果的にものすごく悲しい結末になってしまったけれど、セレッソ大阪がそういう構造に風穴を開けたと思うし」
──セレッソはウルグアイ代表のフォルランを獲得して大きな話題になりましたが、残念ながら2部に落ちてしまいました。結局、社長は辞任。でも、その心意気は称賛できると。
「監督選びを間違えただけでね。あの行動がJリーグを動かしたよね」
東南アジアマネーがJリーグを変える
──失敗と捉えることもできますが、これを繰り返していかないと夢がないということでしょうか。でも、外資はそんな簡単にJリーグにお金を出してくれるんでしょうか?
「出したがっているもん。特に東南アジアは」
──そう言えば、金子さんは2013年にFC琉球のスーパーバイザーとしてマレーシアに飛び、2人の選手を獲得したことがありましたね。マレーシア人選手のJFL(当時日本の3部)への移籍ということで、金子さんはクアラルンプールの空港で現地メディアに取り囲まれました。
「だって沖縄に行くと、ビックリするくらい外資のホテルが建設ラッシュなのよ。沖縄は中国からの旅行者で溢れているから。中国にも海南島があって中国のハワイと言われているけど、海はあまりきれいではない。沖縄は一部の中国人にとって、きれいな海を見られる一番近いところだからね」
──マレーシアのエアアジアや外資系ホテルなど、スポンサーになりうる企業がたくさんあるわけですね。
「それからIR法が通ったら、もう途方もない資金が入ってくる。インテグレーテッド・リゾート。通称、カジノ法案」
──そうしたら東南アジア資本が一気に沖縄に来ますか?
「だって今プレミアリーグのクラブに、どれだけ東南アジアや中国のインターネットカジノのスポンサーがついていますかっていう話よ」
──確かに。
「スポンサーになることができて、カジノが飛行機で約2時間半のところにある。それを東南アジアや中国に向けてアナウンスできます。出さないわけがないと思わない?」
──沖縄には海があって、魅力的な投資対象だと。
「もちろんマカオにも海があるけど、あまりきれいではない。きれいな海があるカジノって実は少ないのよ。ものすごく豊かな自然のあるカジノ。ラスベガスも人工的な街であって、ホテルを出たらほぼ何もないわけじゃない? で、これは沖縄についての理屈だけど、2020年に日本で何がありますかって話じゃない」
──東京五輪ですね。
「どんどん日本マーケットが重みを増していく。そこで受け入れられたら世界へのアナウンスになると考えるアジアの人間、中国の人間は、Jリーグのチーム分くらいはいるよね」
──なるほど。J2だと年間数億円の予算レベルですから、すぐメインスポンサーになれます。
「だってマレーシアのチームの資金力に、Jリーグの多くのクラブがかなわないわけだから。もう解雇されてしまったけれど、ジョホール州のクラブが、元アルゼンチン代表のアイマールに約3億円の年俸を出していた」
年俸3億円を払えるマレーシアの資金力
──金子さんはマレーシアの選手を獲得した経験から、資金力が違うというのを実感しているんですね。
「そう。FC琉球に月給15万円で連れて来た選手が、それによって価値が上がって、今はマレーシアで年収3000万円でやっているわけだから」
──ヨーロッパの外資が来る必要はないんですね。東南アジアにスポンサーになりうる企業がいっぱいいると。
「ヨーロッパにだって、日本に進出したいと考えている企業は、日本人が想像しているより多いと思うよ」
──レッドブルが日本進出を狙っていると聞いたことがあります。
「数年前に琉球にも接触してきていたからね。『FCレッドブル琉球』という名前にはできないのかと。結局、企業名が禁止されているのでダメだったけれど、レッドブル・スタジアムを建てたいという夢を語っていたくらいだからね。今後、いくらでも出て来るんじゃないかな」
聞き手:木崎伸也
(次回に続く)
*本連載は毎週木曜日に掲載する予定です。