【完全解説】生命のレシピをつくる、異端科学者の「正体」

2019/8/22
かつてヒトゲノム解読を巡る競争でその名をはせた生命科学界の“風雲児”が次に挑んだのは、生存に不可欠の最小ゲノムを持つ「生物の作製」という、前代未聞のプロジェクトだった。
足かけ約20年の歳月をかけて誕生したその微生物は、「ミニマル・セル」と呼ばれる。
その微生物は、人類が「生命の設計図」を実験室で作り出す、新時代の幕明けを告げるとともに、「生命とは何か」という問いに答えるための、新たな材料も提供した。
風雲児の名はクレイグ・ベンター。現在72歳のアメリカの生化学者だ。
ゲノム科学の産業応用を推し進める実業家でもあり、自らの好奇心に基づく基礎研究のための資金の多くを、ビジネスによって生み出してきた。
特集『フューチャーヒューマン 世界を変える論文』第5回の本日は、2016年に発表された論文「ミニマル・セル」の意義を、サイエンスジャーナリストの須田桃子氏がわかりやすく解説する。
それと共に、プロジェクトの道のりとベンターの型破りな半生を紹介しよう。今、最も知らないとヤバい男の一人である。

自然界にない「人工生物」を作り出す