世界で「富裕層」と呼ばれる超高所得者たちは、どのようにお金をお金を使いこなし、運用・管理しているのか。その共通点から何を学べるのか。富裕層の資産運用をサポートするS&S Investmentsの代表であり、NewsPicksプロピッカーでもある岡村聡氏の最新著作『世界の超富裕層だけがやっているお金の習慣』の一部を抜粋・要約し、数回に渡ってお届けする。

金融資産3000万ドル以上が真の富裕層

そもそも、どれくらいの資産を持っている人が富裕層といえるのでしょうか。世の中で富裕層として最もよく使われる定義は、自宅用の不動産を除いた金融資産を100万ドル(約1.2億円)以上保有しているというものです。

大手会計コンサルティング会社であるキャップジェミニの調査によるとグローバルで100万ドル以上の資産を保有する富裕層は約1500万人もいるようです。大手のプライベートバンキングの多くは口座の開設条件として100万ドルを最低預入額としているため、100万ドルは目安となる金額です。

ただ、リーマン・ショック後に、ほとんどの主要国で金融緩和が行われ、金融市場も株式を中心として大幅に上昇したため、100万ドル以上の資産を保有する人の数は大きく増えました。

シンガポールでは、プライベートバンキングの中に、顧客の数が増えすぎて人員が足りなくなる事態を避けるために、口座の開設条件を200万米ドル(約2.4億円)や500万シンガポールドル(約4.3億円)に引き上げる銀行も出てきています。そして、私たちのようなファミリーオフィスと呼ばれる中立の資産運用のアドバイザーを雇うのは、金融資産で3000万ドル(約36億円)を超える超富裕層と呼ばれる人たちが中心です。

同じくキャップジェミニのレポートによると、この3000万ドルを超える資産を 保有する人たちは全世界で約14万人いて、100万ドル以上を保有する人の100分の1の規模ですが、資産額でいうと100万ドル以上の富裕層全体の3分の1を占めています。

下図にまとめたように、超富裕層と富裕層では資産運用の対象や手法も大きく異なってきます。超富裕層になるとほとんど制約なく、世界のありとあらゆる商品に投資できます。
 図1

資産額で見た時のグループで富裕層の世界の頂点に君臨しているのが、資産額が10億ドル(約1200億円)以上のビリオネアと呼ばれる人たちです。英語で10億がBillion(ビリオン)であるため、この呼称が用いられています。

何十年に渡って世界の富裕層ランキングをつくっている米国のフォーブス誌によると、2015年の頭の時点で全世界に約1800人のビリオネアがいます。

経済のグローバル化による規模拡大と、リーマン・ショック後の金融緩和により、ビリオネアの数も急増しています。フォーブス誌が最初に世界の富裕層ランキングを作り始めた1987年は140人であったところから、倍以上に増えています。ちな みに1987年は日本がバブル経済のさなかであったため、多くのビリオネアを輩出し、世界一の大富豪も西武グループの総帥、堤義明氏でした。

ビリオネアの数自体も増えていますし、今はSNSなどでその生活ぶりが可視化されやすいので、弊社のお客様である超富裕層の中にもビリオネアをうらやんでいる人もいます。

しかし、ビリオネアは各国の経済活動を象徴するような人物がほとんどで、個人名で多くの人が知っています。目立つ存在であるだけにネガティブなイメージを持たれる行動は、家族はもちろん、自分が関わるビジネスへのダメージともなるために、かえって制約が多くなるように見えます。

米ドル建てで長期的な計画を立てよう

ここまで当たり前のように、米ドル建てで富裕層の定義づけをしてきましたが、日本人であっても自分の資産額や必要となる費用を米ドル建てでも意識することは重要になってきます。

米ドルは、世界最大の経済規模を誇る米国の通貨というだけでなく、世界で最も広くかつ自由に取引されている通貨でもあります。以前は、円も主要国の通貨の中で強いというイメージがありました。

しかし、アベノミクスによる異例の金融緩和により、 ここ数年で円は主要通貨に対して大きく下落しています。安倍政権が発足した2012年末のタイミングでは円を少し上回る水準であったところから、2015年夏までの2年半で120円と、ドルは円に対して5割近く上昇しています。

日本でも、輸入している食品の価格がスーパーや飲食店で引き上げられたり、iPhoneがバージョンアップのたびに大きく値上がりしていたりと、身近な生活でも円がここ数年米ドルに対して大きく下げ、円安となっていることを実感することも増えていると思います。

子供の教育資金や老後資金など長期的に必要となるお金をドル建てでイメージしておくといいでしょう。老後資金として3000万円といった形で目標を立てていても、 日本円が中長期的に米ドルに対して大きく下げて、物価が上昇しているためにお金が足りなくなってしまうという事態が避けられます。

(※本連載は毎週金曜日に掲載予定です)
 世界の超富裕層だけがやっているお金の習慣